05
七月二十六日、十四時三十分。潮流ファイナンスの隠れ家マンション、地下駐車場。
「どぅわっはぁッ!?」
「社長!」
SLAM! 吹き飛ぶ剛流はトラック壁面に背中からぶつかった。駆け寄る社員の手を借りて立ち上がり、鈍く痛む背を
「い、い、痛っ……てぇぇぇなァーもぉ!」
「こっち来ないで!」
「ちょっとちょっと、どうなってんのよ。こんなイキのいい子いたっけ? もっとこう、無抵抗なのばっかだったはずだよね?」
「いえ、それが……髪のアレに気づいたらいきなり……」
「ブチ切れたの? それまで大人しかったのに?」
「ええ、その……はい」
事態を飲み込めていない部下の隣で厚い
「えーっとね、お嬢ちゃん。そのね、髪についてるやつをね、ちょぉーっとおじさん達に見せてくれないかなァ? 大事なのはわかるんだけどね、ちょっとだけ」
「嫌」
少女は猫なで声をばっさりと切る。のっぺりしたサングラスの下、剛流の
「……どうして嫌なのかな?」
「嫌だから。髪飾りさんは渡さない」
にべもなく即答し、シニヨンをまとめる
嶽斬武装大全最終ページのルヴァードを持ったガキがいる。部下の報告を受けた剛流はその子供を隔離幽閉したトラックに突撃。改造脳直結型サングラスのズームと記憶写真の照合が一致すると同時に、有無を言わさず飛びかかった。だが、謎の力によって剛流の背中はトラック壁に打ちつけられた。少女は無傷。
「剛流さん。オレはアレがどーいうモンなのか知らないンですが……なんか知らないンですか」
ひっそり耳打つ部下の一人に、苦虫を噛んだような顔で言い返す。
「……知らねェ。最後の五つは名前と形以外書いてねェんだ。今すぐこっちバラせるモノじゃねェと思うが……」
ルヴァードという兵器が裏社会で伝説となる理由。それは、何よりも強いからに他ならない。
それだけでも十分強力ではあるが、それで社会重鎮は動かない。武器兵装は
裏で生きる剛流は当然、神など全く信じない。だが一方で、自分の知る常識や科学では測れない事象を感じることがごく
引きつる顔の肉を動かし、笑顔を作る。隠した左手を動かしながら、再度問う。
「ねェ、本当にだめかなァ。ほんの二秒でいいんだよ?」
少女は簪に触れたまま剛流を
「嘘。絶対に嫌」
真っ直ぐな敵対の意志を向けられ、剛流はこれ見よがしに舌打ちをする。しかしその口は笑ったまま、むしろ
「ちょっとちょっとォ。おじさんがこォんなのお願いしてるのに、それは無いんじゃないかなァー。あ、もしかしてさ、調子乗ってる? 自分かわいいからなんもされないって思っちゃったりしたでしょっ!」
突如
「いけないなァ。かわいいからって調子乗るのァ良くないなァー。そんなワルイ子にはァ……」
左手で操作を終え、両手をサングラスのレンズ端にあてがう剛流。レンズに『懲罰』の文字が出ると同時に、フレームの仕込みスイッチを押した。
「オシオキしとかないとなァーッ!」
VOOO! VOOO! VOOOOHHH! 少女の首輪が発光し激しいノイズをまき散らす! 倒れ、もがき苦しむ少女を見ながら剛流はサングラスを操作。ノイズがボリュームを増し悲鳴とユニゾン! VOOOOOOHHHH!
「あっ、ああああああああああッ! ああああああぁぁぁッ!」
「アッハッハッハッハッハッハッ! 今だ、盗れッ!」
『ハイ!』
命令に従い二人の部下が大きく踏み出す。片方が少女を押さえつけ、片方が
CABOOOOOOOOM! トラックの扉が、爆炎によって吹き飛ばされた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます