interlude2
七月二十六日、十四時四十八分。都内某所。
合成特殊シートの上で、
学生、浮浪者、ビジネスマン。表の人種から恐れられるチームの
「青樫ィ……もう一回言ってみろ」
下げた頭に、ドスの利いた声。青樫は内心文句を重ねつつ、謝罪の意を口にする。
「こ、このたびは……私と私のチームを助けていただき、
「次」
「部下の不始末が原因で、多大なご迷惑をおかけしたことを深くお詫びし、以降このようなことが起こらぬよう、教育して……」
「ふざけんなコラァッ!」
ZGRACK! 衝撃が青樫の骨を震わせる。取り囲む者たちが
トラバサミのような金歯を
「反省だ? 反省したらどうだってんだ? お前らのために使った金ェ帰ってくんのか? ア? それともなんだ。テメェら全員ボランティアすっかオラ?」
「す、すいませッ……」
「すいませんじゃ済まねえんだよガキィッ!」
「ごぁっ!」
SMASH! コンパクトなアッパーが青樫の顎を撃ち抜く。直撃のダメージと追撃のインパクトに脳を揺すられ、視界が激しくフラッシュ。改造腕を構えながら、長狭谷は
「よく聞け。お前らのせいで潰れた工場はなァ、お前らのためにあるんじゃねえんだ。今日取引できねえせいでどんだけの人間迷惑すっと思ってんだって聞いてんだよオルァッ!」
「ぶげっ! す、すいま……」
「すいませんじゃねえっつってんだろうがッコラァ! 何度も言わせんじゃねえぞ
数発プラスインパクト。鼻と頬の骨に嫌な感触が走り、血が垂れる。
「しかもなんだ!? サツに現場見られた挙句商品キズモノにしようとしただァ!? 女は丁重に扱えっつっただろうがッコラーッ! クソガキのッ! 手垢ついたらッ! 価値下がるって最初にッ! 言っただろうがァーッ!
顔面に手加減無しの鉄拳制裁が連続で叩きこまれる。視界が
ひとしきり殴った長狭谷は腰を上げ、肩で息をしながら
「なんでテメェみてえなゴミガキを出してやったかわかるか青樫ィ。連合のこと吐かれたら困るからだよ。でなきゃテメェのガキ教育できねえカスの願いなんざ誰が聞き入れるかってんだ。いいか、今回テメェらのせいで無駄遣いした金はなァ、カスチーム全員の命じゃ足しにもなんねえほど高額なんだよ。だから……」
CEEEEEEEEE! 長狭谷の言葉を
「ひッ……ま、待ってくださいよ! 何するンですか!」
「決まってんだろ。ケジメつけンだよ」
下がる長狭谷と入れ替わるように、側近が青樫の前に現れる。
「腕二本、借金のカタでもらうぞ。テメーらのために使った金、五千万を半年以内に全額返せ。それ以降は一秒一割で利子つける。払えねーなら地下行きだ。……やれ」
「ちょ、ちょっと……待って! 待ってくれえぇぇぇぇッ!」
悲鳴に構わず後ろ手に扉を閉じる。外で待機していた男が一礼し、淡々と報告事項を口にする。
「お疲れ様です、ボス。剛流さんからお電話です」
「剛流? ……取引延期の連絡はしたよな」
闇金経営の
剛流の潮流ファイナンスは連合の重要な資金源だ。よって、連合絡みの重要連絡は真っ先に回す。女児の買い取りについても、話がついたと聞いている。
「なんでも、直接お耳に入れたいことだと。
「興奮……まぁいい。後始末は全部終わった。俺が直接出る。
「恐れ入ります。こちらの方はお任せください」
深々と頭を下げる側近を残し、長狭谷はオフィスに向かう。去っていく彼の背後で、青樫の悲痛な絶叫が壁ごしに響いていた。
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