02
東京都千代田区北の丸公園。皇居にほど近い場所に広がるこの空間には、国立の美術館と公文書館、科学技術館。そして
機械化なしの老いた顔に、
「んで、結局主犯は見つからなかった、と」
「はい」
魁人より早く、隣に立つヒグロが返す。
「カーナビのデータを
流れるように報告し、ヒグロはすっと頭を下げた。
チンピラ達から
それらの事情を報告書で確認した葉木吹は、優しげに苦笑しつつ片手を挙げた。
「なに謝ってんだ。お前らの判断は正しい。単に誘拐チームがバカで、
「例のチンピラ共も、ナジームのやつが
「先輩がですか?」
出た
「……
「ハハハハハハ! なら、そうならん
彼が出ていき、部屋の
「はぁー……やっちゃった」
「いや、大丈夫ですって。ハギさんも言ってたじゃないですか。俺もあれでよかったって思ってますし」
がっくりと
ヒグロはバツが悪そうに赤髪を
「まぁそうなんだけど……なんていうかね。怒られないのがキツいっていうか。真っ向から怒鳴ってくれたら反論できるんだけど、
「そうですね。それがいいと思います」
険の抜けた表情に、魁人は
一度深く息を吐き、背筋とスーツの
「じゃ、私アイグラティカ取って帰るから。またね」
「お疲れ様です」
バタンと閉じるドアを他所に、魁人は竹刀ケースを持って左目を閉じる。いつもの時刻表示の下に
早めに行って学食で食べるか、あるいは適当な店で腹を満たすか。財布にはまだまだ余裕がある。
左手に周辺マップを呼び出し飲食店を検索、しようとしたところで、魁人は視界端で
……あ。レポートのこと忘れてた。
次の瞬間、魁人はドアを蹴破るように機動隊舎を飛び出した。
●
「はァン!? 納品が出来ないィ!?」
ふんぞり返ったソファから跳ね起き、剛流は
『ええ、ブルージェットとかいう下っ端のクズがヘマぁやらかしましてねえ……市場はひとつ潰さなきゃなんなくなるし、情報操作で忙しいしでてんてこ
『い、いやいやいや。ちょっと困りますよ……おたくに
冷や汗を流しながら食い下がる。
ただ、一方で
『あのですね、剛流さん。こっちも悪いと思っちゃいるンです。剛流さんに注文したのもこっちなら、バカの
相手の声は至って冷静。しかし、そこに含まれる誠意と謝罪の意を、剛流の裏で
『それで、もしこっちの復旧が遅れて潮流ファイナンスさんに赤字が出るようなことがあったら、ウチで責任もって弁償させて頂きますんで。手の届く範囲で顔も利くようにしますから……』
『ああ、はい。そういうことなら了解しました。こっちこそすいません、お忙しい中責めるようなこと言っちまって』
『気にしないで下さい。元はっちゃーこっちの
謝罪といくつか言葉を交わし、剛流は通話を切断。立場を理解し礼節を重んじる。裏社会では、
汗を
「いつまでもお
ぼやきながら眺めるのは、写真付きで紹介された武器の数々。刀、
この冊子に
「どれがいいかなァ。つかこれいくらぐらいすんだ? 金なら一応あるけどよ……」
値段のないカタログを見て皮算用を続ける剛流。
「社長、社長! 大変です!」
「あァー!? 今度はなに!」
「失礼します!」
返答前に部下はドアを跳ね開け転がり入る。そして剛流の手にあるカタログに目をつけると、さっと駆け寄り奪い取った。
「すんません、これ借りますッ!」
「あ、おい!」
剛流を無視して冊子をめくり、最終ページに辿り着く。部下はサングラスを上げると、興奮した目で穴が開くほど凝視する。
「……やっぱこれだ。間違いない!」
「だからなんだってんだよ! 返せオラァ!」
怒鳴って立つ剛流の前に、部下はページを突きつける。二ページ丸々使って掲載された五つのルヴァード。それらはカタログの主、
「こ、これだ。これで間違いないッ! かっぱらってきたガキの一人が、これを持っていやがったんだッ!」
「は……」
剛流の思考回路が止まる。電池切れの機械めいて
「んぬぁぁぁぁぁぁにィィィィィイイイイイイイッ!?」
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