第40話 盗賊兄弟フウ・スイ・チー

 森の中を掻き分けて尻尾の跡を追って行くと尻尾の跡は近くの森の中にあった洞窟の中に続いていた。

「じゃあ、ちょっと行ってくるね! 」


 そういって単身で洞窟に行くはずだった…。

「何でついてきたの? 」

 後ろにいるミソラに話しかけると

「ライムを1人にしたら絶対無理するから、ライムにもしものことがあったらモニカに説明できないからそんなことが起こらないように私がモニカの代わりにライムの手綱を握らなくちゃでしょ! 」


 そういって後ろをトテトテとついてくる。

「俺って、そんなに無茶しそうかな? そんなつもり無いんだけど…? 」

 後ろを振り返りミソラにそう伝えるとミソラはやれやれ┐(´д`)┌とリアクションをした後

「理解してやってたら最悪、理解してなかったら救いようの無いバカだよ…。だからバカの隣には周りが見える冷静な人が隣にいないとマズいでしょ♪ 」

 

 ミソラの言ってることは正しいんだけど…。

「何か納得いかない…」

 ボソッと呟くとミソラに聞こえていたらしく

「雪山であんなことをしておいて何が納得がいかないのよ! 今度は絶対に無茶な真似させないからね♪ 」


 そういってお目付け役が1人ついてきた…。

◆◇◆◇

「明かりが見えてきた、ここからは慎重に進んでいこう! 」

 後ろをついてくるミソラにそういってゆっくりと歩みを進める。

「ねぇ、何か聞こえない? 」

 後ろからミソラが声をかけてくる。


 耳をすますと確かに明かりの方から咳の様なゴホゴホと咳き込む声が聞こえる。

「確かめてみよう! 」

 そういって岩影から明かりの方を覗くとそこには

「あれ、たぶん風邪ですよね? それに氷嚢がわりに使ってるのってユキの下着ですよね…? 」

 

 そう、そこには風邪を引いて弱っているリザードマンが1人と寄り添うリザードマンが2人いた。

「ミソラ、リアを呼んできて! アイツらに風邪薬を渡してユキの下着を返してもらおう! 」

 そういってミソラにリアを連れてきてもらうことにした。その際ミソラから『勝手に動かないで待っててください』と釘を刺された。


「おい、大丈夫か? 」

 リザードマンがいる部屋に入っていく。

 それと同時に横に寄り添っていたリザードマンが槍を持って警戒してくる。

「あぁ、警戒しなくていいよ、俺はお前たちの話が分かるから、それより彼は風邪? 」


 横たわるリザードマンを指差し2人に話しかけると2人とも頷いている。

「じゃあ話が早い、今医者を呼びに行ってるから今使ってるその女性用の下着を返してくれないかな? 」


 そうこうしているうちにリアとミソラがやってくる。

「あっ、着いた! おぉーい、こっちこっヂィ! 」

 ミソラのグーパンチが顔面にクリティカルヒットした…。

「あれほど勝手に動かないで待っててって言ったのにどうして守らないのかな? ねぇ?

どうして? 理由を言ってくれる? 」

 

 怖い((( ;゚Д゚)))ミソラが般若になってる…。

「ミっ、ミソラ落ち着いて何もされてないし安全だかヴァ!! 」

 またもやグーパンチが飛んでくる。


「だかヴァ、ちょ! 間髪入れずに殴ラァ゙ないで! 」

 ヤバイミソラが本気で怒ってる…。

 冗談や反論をする場合じゃない!

 俺はその場で土下座をして本気でミソラに謝る。

「本当にごめんなさい! 俺が悪かったです! だから話を聞いてください! 」


 全力で謝罪をするとミソラはため息を吐いて

「じゃあ、勝手に動いた理由を教えてください」

 般若の形相でこちらを見つめてくる。

「いや、それはさっきも言ったけど中の様子を見て安全だなって思ったガラァ…。ごめんなさい、本当に悪気は無かったの! 話をして説得出来るなら説得をして無理そうなら俺が1人で全てを終わらせようと思ってて…。みんなには危険なことをしてほしくなかったから…。それに俺が人を殺してる姿なんて見てほしくなかったから…。ごめん」


 正直に理由を話して謝ると

「そういうことなら、きちんと理由を話してくれれば殴らないですんだのに…」

 人の話を聞く前に殴ったよね?そんな事を言ったら余計殴られそうだったから絶対言わないけど…。


「お待たせしました! って何でそんなにケガをしてるのお兄ちゃん! 」

 遅れてやって来たリアが俺の顔を見て驚いている。

「うん、それは追々説明するから、とりあえず彼の診察をしてあげて、2人とも彼女は医者だからもう安心して一応風邪薬も持ってきてたはずだから」


 そう伝えると2人はホッとしたのかため息を1つ吐き頭をさげてくる。

「本来なら盗賊だって言われて殺されても仕方ないのに風邪をひいてる兄さんのために医者を連れてきてもらったあげく薬まで貰えるなんて本当にありがとうございます! 盗んだ物はきちんと返します。本当にありがとうございます」


 身体が少し大きいリザードマンが頭をさげてお礼を言ってきた。

「中兄ちゃんは悪くない! 僕があの下着を盗んだんだ! 中兄ちゃんを殺さないでくれ! 殺すなら僕を殺せ! 」

 1番小さな身体のリザードマンが頭をさげたリザードマンを庇うように立ちはだかる。


「殺そうとなんてしてないよ、ただ盗んだ物はきちんと返してね! 」

 そう言って笑いかけ1番小さなリザードマンの頭を撫でてあげると緊張がほどけたのか『よかった~! 』と言ってその場に座り込んでしまう。


「それじゃあリア、診察を始めてあげて! 」

 診察をリアがしているあいだにリアに頼んで持ってきていたハーブティーを飲んでゆっくりすることにした。


「このハーブティー美味しいですね! 」

「そうかな? 僕は苦いんだけど」

 彼らは3人兄弟で近辺で盗賊まがいの行為をしている兄弟で風邪をひいていて鱗が緑がかっているのがフウで18歳、フウより少し小さくて鱗が青みがかっているのがスイで16歳、1番小さなリザードマンがチーで6歳で鱗が少し茶色がかっている。


「診察終わりましたよ♪ 単なる風邪で♪ 運良く風邪薬を持ってきているので渡しますね」

 そういって持ってきていた風邪薬を2人に渡す。

「アニキ、何から何までありがとうございます! 」

「ありがとう兄ちゃん! 」

 2人が嬉しそうに頭をさげてお礼を言ってくる。


「いいよ、気にするな! 困ったときはお互い様だ! それより兄貴の風邪が治ったらその下着を返しに町に来いよ♪ 」

 そういって俺たちは洞窟から帰っていく。

「まったく…。ライムは優しすぎ! まぁそこがライムの良いところなんだけど付き合わされるこっちの身にもなってもらいたいな」

 帰り道、ミソラからぐちぐち説教と文句を言われながら外で待っていたみんなに事情を説明して町に帰ることにした。

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