盗賊に勇者ときどき魔王
第39話 下着泥棒
お花見も終わり桜が青い若葉に変わる時、事件は起きた…。
「ねぇみんな、ウチの下着しらない? 」
ユキの干していた洗濯物から下着がなくなっていた様だ。
「いや、知らないけど誰か知ってる? 」
広場に集まったみんなに話を聞いても知らないらしい…。
「盗られたのって上? 下? それとも両方?
あと盗られた物はそれだけ? 他は大丈夫だった? 」
ユキに確認をするとユキは頷いて盗られた物が下着ワンセットだけだったことを教えてくれた。
「そっか、他に盗まれてるものがなくて良かったよ…。でもどうして下着だけ盗まれたんだろう? 現場を見に行ってもいい? 」
そんなこんなでオリヴィアとモニカとヴィーナス以外のみんなでユキの家に行くことになった。
「う~ん、特に手がかりになりそうな物は無いね」
洗濯物が干してあったところへ来てみたものの特に何もなかったと思っていたら
「ライムお兄ちゃん! ここを見て! 」
リアが何かに気づいたのか足元を指差し、みんなを集める。
何かを引きずった跡が森の中に続いている。
「これって何かを引きずった跡のこと? 」
隣にいたミソラに話しかけるとミソラは頷いて
「たぶんその引きずった跡はリザードマンの尻尾の跡だと思う」
「それってもしかして、この尻尾の跡を追って行けば犯人と思われるリザードマンに追いつくんじゃない? 」
そう確認をするとみんな頷いている。
「じゃあ、みんな装備を整えてまたここに集合! 」
そういって装備を整えに家に1度戻る際アルテミアさんに服を引っ張られる。
「どうしたんですか? アルテミアさん」
迷っている顔でこちらを見つめているので理由を尋ねると
「いや、私って女神だから片っぽだけ肩を持つのはマズイと思うんだけど…。だから私も留守番してていい? 」
確かに言ってることにも一理あるのだが…
「でも盗賊って悪だし、女性の下着だけ盗むなんて女の敵じゃないの? 」
もっともらしい事をアルテミアに尋ねた、するとアルテミアさんは笑顔で
「女神だからどうしてこうなったのか分かるのよ♪ だから私が行かなくても大丈夫だってことが分かるの! そうだ! リアちゃんに風邪薬とハーブティーを持っていくように伝えてくれる? きっと役に立つから! 」
そういってアルテミアさんは手を振って帰っていってしまった。
「何で風邪薬なんだ? 」
疑問に思いつつも女神アルテミアが言うことなのだからきっと役に立つのだろう…。役に立たなかったらバカ女神ヴィーナスと同類にする。
◆◇◆◇
「…と言うわけでリザードマンの尻尾を追って犯人を捕まえに行ってきます」
家に帰りモニカとオリヴィアに経緯を説明する。
「何が『…と言うわけで』なの! まったくお兄さんは次から次へと、どうしてトラブルに首を突っ込むの! モニカさんだっているのに…。まったくもう少し周りのことも考えて! 」
オリヴィアに説教をされてしまった。
「本当だよ! オリヴィアちゃんの言う通りだよ! まったく…どうせダメって言っても行くんでしょ? 」
モニカには全てお見通しだった様だ・・・。
「絶対ケガとかしないでね! 家で待ってるからね♪ 」
ケガをしない様に念をおされて犯人を捕まえに行くのを許可してもらえた。
「あとはリアに風邪薬とハーブティーを用意してもらうか…」
一応女神のアルテミアさんが言ってたのだから念のため持っていこう。
集合場所に行く前に1度リアの家によることにした。
「リア、ちょっといい? 」
そういってリアの診療所のドアを叩くと中から『ちょっと待ってて~』と声がする。なのでしばらく待っていると
「お待たせ! どうしたのお兄ちゃん? 」
俺が来たので何かあったのか不思議そうに俺を見てくるけどリアの方が…。
「いや、俺のことはとりあえず置いといて、リアの方こそどうしたのその格好? 山籠りでもするの? 」
大きなリュックを背負ってランタンやテント等を背負っている。
「そうですか? だって盗賊のアジトに乗り込むんですよね? このくらいの装備は必要だと思うんですけど…? 」
俺の方こそ、そんな軽装でいいのか疑問に思われてしまった。
「えぇ~っと、話を戻すけど、実は盗賊のアジトに行く時の荷物に風邪薬とハーブティーを一緒に持っていってもらいたいんだけど大丈夫かな? 」
リアにそう話を切り出すと不思議そうに顔を傾げて
「何で風邪薬とハーブティーなんですか? 」
そう聞いてきたのでアルテミアが女神だから! なんてことは言っても信じてもらえないだろうから誤魔化すことにした。
「いや、若干だけど風邪気味だから戦闘に入る前に体調を整えておきたいから、ハーブティーは単純に喉が渇いた時に飲めるようにダメかな? 」
リアは少し考えてから『しょうがないなぁ~』と言って背負っているリュックに風邪薬とハーブティーの茶葉と水筒にお湯を入れて持っていく準備をしてくれた。
「ありがとうリア♪ それじゃあ行こっか♪ 」
そう言ってリアに手を差し出すと
「お兄ちゃん、そういうことはモニカさん以外の女性にやるのはどうかと思うんだけど? 」
少し呆れた顔で差し出した手を握ってきた。
「何で? 別にみんな家族だし普通じゃない? 」
不思議そうにリアに聞くと
「何かもういいです。お兄ちゃんはそのままで良いと思います」
2人で手を繋ぎ集合場所であるユキの家にむかった。
◆◇◆◇
「お待たせ~! みんな揃ってる? 」
声をかけるとみんな揃っている様子だった。
「さてと、全員揃ってるからこの尻尾の跡を追って盗賊退治に行きましょうか! 」
そういって俺とユキ、ノルンお姉ちゃん、ミソラ、リカリアさん、リアにフィーの7人でリザードマンの尻尾の跡を追って森の中にむかっていく。
「ねぇ、何で? ライムはそんな軽装なの?
大丈夫なの?」
ミソラが心配そうに見つめてくる。
「いや、俺は軽装の方が動きやすいから良いかな。ほら、俺の得意な武器は弓矢だから機動力重視なんだよ。だから軽装なんだよ」
そういって弓矢を掲げて
「あっ、そういえば思い出したんだけどユキとノルンお姉ちゃんとリアは後衛で他は前衛なんだけど俺が最初1人で偵察に行ってからみんなに合図をするからそしたら乗り込んできて」
「何言ってるの馬鹿!! 何、わざわざ危険に飛び込むの! みんなで行けばいいじゃない! 」
案の定ミソラに怒鳴られたけたどなんとか説得(半分呆れられながら)することが出来た。
森の奥に続く尻尾の跡の先にいるリザードマンの盗賊より後ろから鋭い視線を送ってくるミソラの方が何倍も怖いと思った…。
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