第35話 桃・桜・時々アケビ

 季節は移り変わり俺が異世界に来てからもうすぐ1年が経とうとしている。季節も冬から春に変わりつつある。


「モニカどう? 平気? 」

 モニカのお腹は大きくなって子供がいると認識出来る様になっていた。

「もう本当にお義…お父さんは心配性ですね~! 」

 そういってモニカは微笑みながらお腹を擦っている。

「自分の子供と愛する妻を心配するのは当たり前でしょ! 」


 そういってモニカのお腹を擦って耳を当てて音を聞く。

 ドコッ!

「あっ、今お腹蹴った」

「本当だ! 男の子かな? 女の子かな? 」

 

 2人で仲良く会話をしていると

「モニカさん、薬草を煎じたお茶です。吐き気とかつわりが以前より治まってきたからって油断しないでくださいよ! 」

 リアがお茶を持ってくれた。


「そういえばリア、ハーブ園は順調? 」

 フィーとリアが2人で育てているハーブが順調に育っているのか聞くとリアは笑顔で

「私とフィーさんが育てているんですから当然です! 今の季節だとモモの果実の核の中にある種子を、生薬の「桃仁」と呼び、消炎性の駆瘀血薬(くおけつやく)といって、血液の滞りをなくし、血液の循環をよくする働きがあり、桂枝茯苓丸や桃核承気湯といった婦人の更年期障害、月経不順、血の道症などを改善する漢方処方に配合したりするの」

 笑顔で分からない薬学を語られても・・・


「でも桃の木、ここに無いよね? 」

 町には桃の木が無いと思うんだけど。

「そうなの、だから今から桃の木を取ってきたいんだけどお兄ちゃん手伝ってくれる? 」

 お茶を持ってきたついでに俺を誘うのか…確かに暇だけど良いのかな? モニカの方を見ると

「このあいだみたいな事をしないでケガが無いように帰ってくるならいいですよ。またいなくなったら怒りますよ! 」


 モニカから許しが出たのでモニカの事をオリヴィアとアルテミアさんにお願いをして俺とリア・フィーさん・ユキ・ミソラ・リカリアさん・ノルンお姉ちゃんの7人でミソラとノルンお姉ちゃん・リカリアさんの3人は町に苗木を、残りのメンバーで山に木を取りに行くことにした。…またって何だ?

◆◇◆◇

「うわぁ~凄く綺麗! ウチ、初めて桜を見たよ! ねぇねぇ、桜も町に植えようよ」

 隣で山桜を見たユキが興奮気味に話しかけてきた。

「確かに桜並木とか作ったら観光の名所とかにもなりそうだね♪ リアカーに乗せていくつか町に運ぼっか! 」


 そんなこんなで桃の木と桜の木をいくつか町に持ち帰ることにした。

「それにしても本当に綺麗ですね。私がこうして外の世界をゆっくり見られるのもリアさんたちのおかげですね! 」

 

 そういってフィーさんはリアと腕を組んで前を歩いていく。

「お兄ちゃん、お兄ちゃん! あれ! あれ見て! アケビだよ! 採ってきていい? 」

 目を輝かせながらアケビ指差している。

「それよりアケビも持ち帰ろうアケビは果実は甘くて寒天みたいな食感で美味しく食べれるし、蔓はイスとかバッグに細工出来るから

生薬の効果もあれば一石三鳥でしょ! 」

 

 そういってアケビの根っこを傷つけないように掘り出してリアカーに乗せる。

「リアカーがいっぱいになったから1度町に戻って置いてこよう! 」

山桜が2本とアケビが2本の計4本を1度町に持ち帰ることにした。

◆◇◆◇

「あっ、おかえり~! こっちも苗木をいくつか買ってきたよ! 」

 リカリアさんが手を振りながらこっちにむかってやって来る。

「ちょっとリカリアさん待って! 苗木持ったまま走ると…」

 ミソラが全部言い終わる前にリカリアさんは俺の目の前で盛大にコケた苗木を俺にむかって投げるかたちで…。 


ドスン!


 そんなに重くないとは言え苗木は苗木だ…。

「重い…。助けて…」

 そういって地面を叩くと

「ヒドイ! 女性に重いなんて言っちゃいけないんだよ! そんなことを言う人にはお仕置きです! 」

 

 …いや、お前が乗ってたんかい!

「ごめん、まさかリカリアさんが乗ってるなんて思わなかったから…。苗木が重いから退かすのを手伝って欲しいんだけど」


 そういうとリカリアさんがお腹から退いてユキと声を聞き、駆けつけてくれたオリヴィアが苗木を退かすのを手伝ってくれた。

「2人ともありがとう」

 ユキとオリヴィアにお礼を言って1度風呂に入るために家に戻った。何故って? それはスライムでぬるぬるになっちゃったからね・・・。

◆◇◆◇

「ただいま~」

そういって家の玄関を入って、すぐ隣の扉を開けて、大人10人が足を伸ばせてゆっくりくつろげる大浴場に入る。


「あぁ、スッゴいぬるぬるだ…。とりあえず綺麗に洗い流さなきゃ…」

 そういって身体を洗っていると

「あれアルテミアさんですか? 何かあったんですか? 」

 浴槽の方からモニカの声がした。


「あぁ、ごめんモニカ入ってたんだ? 俺だよライムだよ♪ ちょっといろいろあって身体がぬるぬるになっちゃったから洗いにきたんだよ♪ 」

 身体が洗い終わり浴槽に入ってモニカに寄っていくと

「えっ! お義ブグブグブグップハ・・・。あれ? もう帰って来たの? 桃の木はあったのライム」

 お風呂に入っているからなのかモニカの顔が真っ赤になっていた。


「ちょっとライム!乙女のお風呂に入らないの! 」

 俺が浴場に入ったことに気がついたのかアルテミアさんが浴場に入ってきて俺は浴場から追い出された。

「ねぇアルテミアさん、アルテミアさんに聞くのはお門違いだと思うんだけど何かモニカがここ最近おかしいんだけど何か知らない? 」

 

 アルテミアさんにモニカの事を聞くと

「えっ…。ナニモシラナイヨ…。あのバカ!

本当にいろいろ天界の規定を破って! 今度という今度は絶対反省するまで許さないんだから! 」

 ぶつぶつと何か囁いていた。

「また、あのバカ女神が何かやったの? 」


 アルテミアさんに聞くとアルテミアさんは笑って

「ええ、でも今は教えられないかな? いずれその時がきたら話してあげる。それより良いの? みんな外で待ってたわよ! 」

 そういってアルテミアさんは背中を押してくる。


「そっか、じゃあその時になったらちゃんと教えてね! それじゃあまた山に行って来るね! 」

 そういって家の玄関を開けてユキやミソラが待つ町の広場にむかっていく。


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