第33話 アルラウネとハーブ園
「きっ、キャァァァッー!!! 」
うん、やっぱりこうなったか…。
フィーさんの悲鳴があがり殴られそうになる。
「ごめん! わざとじゃないんだよ! 後ろにいるバカが押してきてバランスを崩しちゃったんだよ! 」
身体を戻し、振り上げられた拳を受け止めてどうしてこうなったか説明をする。
「…つまり、後ろから押されてバランスを崩してしまって私に抱きついてしまったと…」
疑いの目でこっちを見つめてくる。
「本当にごめんなさい」
その場で土下座をして謝罪をする。
「わざとじゃないってことも分かりましたし今回だけ許してあげます」
そういって拳を下ろして落ち着きを取り戻してくれる。
(落ち着いてくれるのは嬉しいけど警戒されちゃったのか、かなり距離を取られちゃったな…)
仕方ない自分の責任だと感じながら話を続ける。
「ねぇ、そんなことどうでもいいから早く仕事終わらせて家に戻りたいんですけど! 」
後ろからやる気が一切感じられない声が聞こえる。
「誰のせいでこんなことになったと思ってんだよ」
後ろでボソボソ呟いているバカ女神に文句を言うと
「ハァ~!? なんで私が文句言われるの? 」
なぜそんなことを言われるのか本当に分からない様だった。
相手をするのもめんどくさそうだったので畑に植えるのをどれにしようか考えていたら後ろからフィーさんが
「この畑に植えるなら、その
土と作物の話をするときの彼女の顔は優しく全てを慈しむ様な顔をしていた。
「スゴく詳しいですね、もしよければ他にも何か教えてもらえませんか? 」
そう尋ねると嬉そうに作物や土について話し始めた。
◆◇◆◇
「なるほど…。ねぇ、フィーさんって薬草とかの栽培にも詳しい? 」
フィーさんに教えてもらった野菜の苗や種を植えながらフィーさんに話を聞くとフィーさんは少し考えてから
「栽培はしたことないけど育つための条件とかは分かるよ。でも何で? 」
不思議そうに首をかしげている。
「ちょっと話したいことがあるんだけど少し待ってて」
そういってリアのいる診療所にむかっていく。
~数分後~
「お待たせ! それで話っていうのは、今度ハーブ園を造ろうって話を彼女としてて、もしここに住んでくれるなら、良ければハーブ園の管理とかを任せたいなって思ったんだけど、どうかな? 」
フィーさんにそう伝えるとフィーさんは少し驚いた様子で
「私でいいんですか? ついさっき会ったばかりですよ! 」
そういって確認してくる。
「俺、人を見る目だけはあるから! フィーさんは信用できる人だと思った自分の直感を信じる」
その言葉を聞いたフィーさんは、少し呆れながら、でも表情はさっきよりも優しそうな
笑みを浮かべていた。
「それで、どうかな? ハーブ園の管理頼めるかな? 」
フィーさんに聞くとフィーさんは笑顔で
「分かりました。ここに外にはない大きなハーブ園を造りましょう! 」
そういってフィーさんはこの町に住み、ハーブ園の管理をしてくることになった。
◆◇◆◇
「スゴいわね、ああやって戦わずに他種族と交流して一緒に住むなんて…」
俺とフィーさんのやり取りを見ていたアルテミアさんが感心した顔でこちらを見つめてくる。
「そんなことないよ、それにこれをやるには転生特典の【魔物と心を通わせる力】が必要なんだから、だから2人のおかげでもあるんだよ」
アルテミアさんにそういってお礼をするとアルテミアさんは笑って
「どういたしまして、でいいのかな? 転生する原因はこっちなんだけど…? 」
と困っていた。
「まぁ、いいんじゃない? だってあれがあったから今があるんだし…。結果オーライ的な」
そういって笑いかけるとそれを聞いていたバカ女神はニタニタ笑いながらこっちに近づいてくる。
「私のおかげでもあるんだよね? ほら、褒め称えてもいいんだよ! 」
コイツは何か間違えているらしい。アルテミアさんに感謝はしてもコイツには怒りしかないということを…。
「こっち来てよ♪ 」
バカ女神を呼び寄せる。
「もぉ~、やっと私の偉大さが分かった? 」
そういってこっちにやって来る。
「そもそもお前がミスらなけりゃ良かったんだろうが! 」
バカ女神のコメカミをグリグリする。
「痛い痛い痛い! それやめて! 何でそんなことするの? 私は偉いのよ! 女神なのよ! 」
涙目になりながらこっちをキッと睨んでくる。
「そういって女神だって事を鼻にかけてるから腹が立つんだよ! アルテミアさんには転生特典をくれたこととかアドバイスをくれたりしたからお礼を言うけどお前には絶対に感謝はない! このインチキ女神」
きっぱりと言い切ると涙目になり俯いてしまった。
「わざとじゃないもん。私だって仕事を一生懸命にしてるもん。結果がついてこないだけだもん…」
そういって人差し指どうしをイジイジして落ち込んでいる。
言い過ぎたのかもしれない…。
少し反省していると
「そうよ、わざとじゃないもん! 私が悪いんじゃない! 私を受け止めきれない世界が悪いの、この世界は私には狭すぎたのよ! 」
少しも反省の色が見えない…。
「十中八九、お前が悪いんだよ! 何でお前は無駄にポジティブなんだよ! 」
もう嫌だコイツ…。
呆れてバカ女神を見ていると
「ヴィーナスがあんな子で本当にごめんなさい」
少し離れた所にいたアルテミアさんがやってきて謝ってくる。
「いやいや、別にアルテミアさんが悪い訳じゃないから! それより1人でボーッとしてたけど大丈夫? 」
アルテミアさんの顔を下から覗き込むとハッとした顔で
「嘘! 私、そんなだらしない顔をしてた!? 」
恥ずかしそうに頬を赤らめていた。
「いや、別にそんなに酷い顔はしてないと思うけど、それより平気なのか? 」
改めてアルテミアさんに聞くと
「うん、ちょっと意識だけ天界に行って今のあいだにさっきの報酬の話を創造神と相談してきたんだけど、そっちに任せるって言われたからとりあえず前払いと成功報酬を用意したからとりあえず前払いをしちゃうね! 」
アルテミアさんがウインクすると同時に辺りは暗闇に包まれていく…。
◆◇◆◇
あれ? ここはどこだ? 自分の姿はしっかりと分かるのに周りは暗く俺以外何も見えない。
「どこだ? ここ? 」
そう呟くと後ろから聞いたことのある不思議そうな声が返ってきた。
「あれ? お義兄ちゃん? 」
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