第2話 魔物の心
さてと、ここはどこだ?
辺りを見渡すと周りは木、木、木…どうやら俺は森の中に転生されたのだろう。
たしかに街中にいきなり人が転生させられてきたら周りはパニックになるだろうし賢明な判断だと思う、装備もしっかりしていてさっきまで着ていたパジャマじゃなくてよかった。
現在の状況を確認しよう。
あれ?ステータスみたいなログが出てきた。
【名前】ライム【性別】男【年齢】17歳
【ジョブ】冒険者【スキル】意志疎通
【基礎能力】
力【D】、俊敏【B】、耐久性【D】
器用さ【SS】、運【SS】、魔力【B】
【スキルポイント】
残り777内ボーナスポイント777
【アルテミアからの助言】
とりあえずスキルポイントを100ポイント使って意志疎通のスキルを全部覚えておきなさい。それとヴィーナスはしっかり指導してるから心配しないでね~!!
…なるほど、とりあえず助言通り意志疎通のスキルを全部覚える。
っていうか力と耐久性、低すぎだろ確かに俺は弓道部で力仕事とか苦手だったけどここまで低いのか?
っと、とりあえずその事は一旦置いといて早いとこ近くの町か村に行かないと…。
俺は森の中を女神から貰った初期装備の剣鉈と弓矢を装備して、剣鉈をすぐに構えられる様に手を柄に添えながら森を進んでいく。
「キャァァァァ! 来ないでイヤ、イヤァァァァァァァァァ! 」
どこからか女性の声が聞こえる。辺りを見渡すと近くの茂みに背の小さな薄い緑色の肌でファンタジーの世界によく居るゴブリンのような生物がいる。
とりあえず正体が分かるまでゴブリンでいっか!
俺は弓矢を構え、ゴブリンを目掛けて矢を放つ。
ドスッ!
矢はゴブリンの腕に当たる。
「ギャァァァァァッ、誰だ? どこからか矢を放ちやがった! 」
えっ!?…どうしてゴブリン達の声が聞こえるんだ?
「おい、あっちに居やがったぞ! 」
もう一体いたゴブリンにバレてしまったらしい、どうしてゴブリンの声が聞こえるのかは今は置いといて…
「おい、そこの女性! 今すぐ逃げろ! 俺がそのゴブリン達を引き付けるから今のうちに逃げるんだ! 」
茂みに居るであろう女性にむかって声を掛けると
「よかった、無理矢理犯されなくて、でも何で人間がゴブリンの私を救ってくれたんだろう? 」
マジかぁぁぁぁぁ!女性だと思ったのはメスのゴブリンだったのかよ!
「クソ人間が! 人の交尾を邪魔しやがって
ゼッテー殺してやる! 」
あぁ、やべぇ怒り狂ってるよ…。
けど何とかしないと…。
接近戦は不利になるから近づかれる前に一体は倒さないとマズイな。
弦を引き絞り、狙いを定め矢を放つ。
ドスッ!
ヘッドショットが決まり、ゴブリンを一体葬り去ることに成功した。
「なんだと! あの距離からヘッドショットを決めてくるだと…クソッ! 悔しいが一旦引くしかないか、また来るよモニカちゃん」
メスのゴブリンを最後に見つめてからオスのゴブリンは森の中に消えていった。
「おーい、襲われてたみたいだけど大丈夫か? 」
メスのゴブリンの前にしゃがみこんで声をかける。
メスのゴブリンは辺りをキョロキョロと見回している。
「いや、君しかいないから大丈夫? 平気だった? 」
そういってゴブリンを見つめるとゴブリンは驚いた顔をしたあと恥ずかしそうに頷いた。
「人なのに私みたいなゴブリンを心配してくれるのですか? 」
彼女は不思議そうに首を傾げてこっちを見てくる。
「いや、最初は人が襲われてると思って助けたけどゴブリンだからって手のひらを返して知らんぷりって訳にもいかないでしょ悲鳴が聞こえたんだから、それに種族なんて関係ないよ、助けたいって思ったら。無事でよかったよ、立てる? 」
そういって彼女に手をさしのべると彼女はさらに驚いた顔で
「私の言葉が分かるんですか! どうして!? 」
と顔を寄せてきた。
「えっ!? 普通に人がしゃべってる様に聞こえたんだけど、だから君がモニカって名前もさっきの男のゴブリンとの会話でわかってるけど…俺もモニカって呼んだ方がいい? 」
彼女にそう伝えると彼女は絶句していた。
◆◇◆◇
「ごめんなさい、本当にどうしてライムが私たちの言葉が理解できるのか理解できない」
モニカは、ため息をついて不思議そうに俺を見つめてくる。
「でも少なくともモニカは俺が聞こえてるって信じてくれてるんだよね? 」
モニカは呆れ半分、驚き半分で
「だって…ねぇ…」
と言って背中で恥ずかしそうにモゴモゴ言っている。
「いやいやモニカ、その感想で終わりにしないでよ! 俺だって驚いてるんだから! 」
さっきのゴブリン達の襲撃で足を挫いてしまい俺に背負われているモニカにツッコミをいれると真剣な声でモニカが
「なんか、貞操を守ってくれた優しい人間に名前で呼ばれて背負われるって恥ずかしいし何より不思議な感じ。ねぇライム、あなたはこれからどうするの? 」
モニカが肩に顔を寄せながら俺の耳元で眠そうに話しかけてきた。
どうしよう、正直まったく考えていなかった。
「何も考えてなかった…モニカはどうするの? 」
背負っているモニカに声をかけるとよっぽど疲れていたのだろう背中からは寝息が聞こえてくる。
「疲れたんだね…お疲れモニカ」
そういって俺は彼女が休められる場所を探すことにした。
◆◇◆◇
どのくらい歩いたのだろう窓ガラスが割れ誰も住んでいない廃屋らしき建物が見えてきた。
「今日はあそこで野宿をしよう」
背中で眠っているモニカに声をかけ廃屋にむかっていく。
廃屋に着くとモニカを背中から下ろし俺の横に座らせる。
あぁ、なんかいきなりすぎて何があったのか理解が追い付かないや…でも確かなことは俺は1度死んでこの世界に転生したこと、それは間違いないことだ。
でもよかった…瑠璃や義父さん、義母さん達が無事で…。
瑠璃、泣いてないかな? また下着で寝て風邪ひいてないかな? 義母さんと義父さん、喧嘩してないかな? 責任感じちゃってるかな?
そんなことを思っていたら頬を撫でられた。
「大丈夫ですか? 何で泣いてるんですか? 」
膝の上から心配そうに俺を見つめるモニカがいた。
「うん、大丈夫かな? きちんと整理がつくまで時間がかかると思うけど…」
心配そうなモニカに伝えると
「いつでも頼ってください、私だって目の前で泣いている人を他種族だからなんて理由で
放っておけないですから! 」
そういってモニカは笑いかけてきてくれた。
「ありがとうモニカ」
心細い異世界で初めて会った相手がモニカで本当によかったと思った。
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