4.トマト

澤井トマト 50才。


夕食も終わり、

とまとは、郵便ポストに入っていた封筒を開け、

出てきた一冊の茶色のノートを眺めていた。


「なにこれ??」


「USI NOTE」と、書かれた表紙をめくると、大きな字で


「このノートに名前を書かれた人間は牛になります」

                   と、 一行だけ書かれている。


そういえば、焼肉屋さんがオープンするとか、したとか、そんなポスターを見たっけ。


あのお店の宣伝かな?   裏にクーポンとかもついてたりして??


トマトはノートをパラパラとめくった。


テレビでは大相撲のダイジェストが放送されており、

アジアの国から来た大柄な外国人力士が四股を踏んでいる。


母国ではレスリングの選手でオリンピック出場が決まっていたのだが、

ある殺人事件の現場付近での目撃情報があったため、警察に拘留され、捜査を受け、結局、証拠不十分で釈放されたのだが、このことが原因で、オリンピックの出場資格を失った。

そのため、日本では、同情を受け、多くのファンから応援されている、くったくのない笑顔の人気力士である。


「この横綱が、牛になったら、食べがいがあるだろうなあ~。」と、


想像して、なんだか嬉しくなった。


トマトはノートに、力士の名前を書いて、小さなハートマークをつけた。


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