3.たまこ

澤井たま子、10才。


図書館からの帰り道、

今にも雪が降りそうな曇り空の下を歩きながら

数か月前の朝礼での、校長の話の記憶がよみがえり、

たま子はため息をつきました。


「皆さんに悲しいお知らせがあります。

1年3組の。。。  交通事故でなくなりました。。。。」


5年生のたま子は、新入生のお世話係をしていたのですが、

事故で亡くなった子は、たま子を慕っていて、

昼休みになると

いつも、たま子と遊んでいたのでした。


車を無免許で運転したあげく、子どもをひいてしまった15才の少年は、

たま子の近所に住んでいるA君でした。


日ごろから、いじめ、かつあげ、万引き等、

非行を繰り返したあげくに

今回の事故を起こしたのだが、未成年だったため、

数年を少年鑑別所で過ごし、出所してくるだろうとの噂は、

たま子にも伝わってきたのです。


突然、

背後で バサッ と音がしたので、たま子がびっくりして振り返ると、


地面に、緑色のノートが落ちていました。


「なんだろう??」  拾い上げると、


表紙には「カエルノート」と書いてありました。


中を開くと

「ノートの使い方」


①このノートに名前を書かれた人は数日以内にカエルになります。

名前を書いてから40秒以内に、場所と時間を書きたせば、

その変体する場所や日時が指定できますが、

書かない場合は、てきとーなタイミングで変化します。


②名前と顔がわかっていない場合は効力がありません


③ノートに名前を書いたからと言って、

いつもカエルに変えられるわけではありません。

動物界にいるカエル神さまたちの審議が行われるからです。

なので、〇ちゃんが、バカって言った!

くらいのことで、名前を書いてはいけませんよ。


④ノートは人に見せたり、貸したりしてはいけません。


⑤一度書いた名前は、消しゴムなどで消すことはできないので、

書く前によく考えてください。


⑥名前が間違っていた場合には変化は起こりません


⑦ノートの所有者が自分の名前を書いても変化はおこりません。


⑧このノートを落書き、勉強などに使ってはいけません。

関係のないことを書いても数分で消えてしまいます。


⑨ノートのページは増えていきますので、終わることはありません。


⑩たまにカエルノートの持ち主のカエル神様が現れることがあります.

カエル神様はノートの持ち主にしか見えませんが、

写真を撮る等、失礼なことをしてはいけません。


⑪カエル神様の好物はワカメです。  

 

⑫ ・・・・・

このように数ページにわたり、ノートの説明が書かれていました。


たま子は、家に帰ると、こっそりノートを開き、さっそくA君の名前を書きました。


数日後、茨城県少年鑑別所では、

夜の間にA君が脱走したと大騒ぎになっていました。


右往左往している職員の靴に蹴られて、

一匹の青ガエルが玄関先へと転がり出たところへ

ノラ猫が通りかかり、 青ガエルを じっと見つめました。


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