私は夢(そら)の中に
ふと、目を覚ますと知らない場所にいた。
周りには何もなかった。真っ白な空間が私の前にただただ広がっていた。
目線を下げ格好を確認すると、白いローブを着ていた。それしか着ていなかった。下着もなかった。
ここはどこだろう。
自分で自分の頬を叩いてみる。痛い。はれ上がるような痛みが頬全体を覆った。痛覚はあるようだ。
ここはどこだろう。
さっきからずっと立っていたので疲れてきた。膝を曲げて床に胡坐をかく。
ここはどこだろう。
そういえば、私は寝る前に何をしていたのだろう。少し物思いにふけってみる。
私は普通の会社員だった。平穏な人生を送ってきた。揉め事などはなく、争いなどは避けて生きてきた。誰に恨まれることもなく、恨むこともない。無に近い生活を。
ここはどこだろう。
だんだん思いだしてきた。朝、雨が降り空気がじめじめしていた。昼ごろには雨は上がっていた気がする。私はパソコンに向かい仕事をしていた。
そして鐘がなった。この鐘は仕事終了の合図だ。私はパソコンを閉じ、荷物をまとめ始めた。周りの人たちはこの後飲みに行こうと話していたりや彼女に電話などをしている。しかし、私に声をかけるものは誰もいない。
荷物をまとめ終わった私は、一番最初に空を見た。
ここはどこだろう。
綺麗な夕焼けに変わっていた。どこまで続いているのかわからないほど大きく、何物でも飲みこめるような綺麗なオレンジ色の空だった。
近づきたい。私は思った。
私の足は無意識に引き返していた。私の勤めていた会社は高層ビルの中にあった。私はその屋上へと向かった。
ここはどこだろう。
その空はさらに大きくなった。何処までも、何処までも。
もっと近づけば、もっと大きくなるのではないか。私は屋上の端にあった柵に気づき、登り、もっと近づこうとした。
登りきった私はさらに空に近付けた気がした。
もっと、近づきたい。もっと、もっと、空へ!
私の記憶はここで途切れた。
空はどこだろう。
記憶が途切れた瞬間、空間は綺麗なオレンジに染まった。美しいオレンジへ。
オレンジは途切れなく広がっていく。
私はオレンジの中にいた。オレンジと一体化していた。
空はここだ。空は私だ。
私は涙を流した。
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