ちっぽけ.2

 私の背中は曲がっていた。

 年老いてという意味ではない。先日、運動していないと体調を崩すというありきたりな健康番組をみた私は何を思ったか、いきなり運動をしようとしたのだ。そして、遠くの神社まで走ろうと二、三キロの道のりを駆け出した。

 その後は皆さんの想像の通り。使っていない体に鞭打った結果、悲鳴を上げ全身筋肉痛という手痛い失敗に終わった。やはり、運動は徐々に上げていくのに限る。

そして今、私は背中の筋肉痛によりおじいちゃんの様な見てくれになっている。

 私はある場所に向かっていた。ある場所はとくにいう必要がないので詳しくはいわない。

 目に一筋の光が入る。実際には光などでは無いのだが、私には光以外の何物でも無かった。それは私が心を奪われている姫方だった。美しく、神々しく、私の目に映っていた。

 私は背筋を伸ばした。自分を大きく、真っ直ぐに見せようとするちっぽけで尊大なナルシズムが私を支配していた。

 そのまま天使は私の右側を通り過ぎていく。私は偶然を装い振り返り、完全に見えなくなるまで眺めていた。

 空気が自然に戻ると、私の背中はまた曲がってしまった。さらなる痛みを伴って。

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