初彼と手紙
橘くんの試合が無事に終わって、また普段通りの日常生活に戻った。
私はいつもの様に学校へ行き、教室に入る。
まだ、橘くんの姿は見当たらなかった。
そして自分の席に座って、鞄から教科書を机の中に入れようとした時、紙が擦れる音がした。覗くと中には真っ白な手紙が入っていた。少しクシャッとしてしまった
─茜ちゃん、この前は応援してくれてありがとう。
手紙なんて書いたことなくていまいち分かんないけど、驚いたかな。教室で会えるのにおかしいけど。笑
今日あとで昼休みに話がしたいんだけど良いかな?
いつも保健室行く方の1階の廊下辺りで待ってるよ。
ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤホープ─
なんですかコレは──?!
内心ドキドキ…、初めての手紙が橘くんから!
いつ入れたんだろう?
それに話って、絶対あの事だと思った。
顔が勝手に火照ってきた…。やばい。
もう緊張してきた!
どうしよう、授業に集中できな…。
「豊田さん」
「わっ!びっくりした!!」不意に声をかけられて私はそう言っていた。持ってる手紙を慌てて隠した。
…見られた?
「ごめんなさい!脅かすつもりはなくて…」
そこに居たのは同じクラスの森香奈実さんだった。縁が朱色の眼鏡をしていて、髪を二つに分けて耳の下辺りから結んでいる。そういえば、森さんも1人で居ることが多い印象だった。
「あれ、あの三木先生のプリントを配ってたよね。豊田さんも、過去に相談とかしてたの?」
「あぁ、うん、してたよ」
何だろう?興味持ってくれたのかな。
「そうなんだ。…それって、もう解決したの?」
そうか、去年は違うクラスだったから知るはずないよね。
「去年色々あったけど、もう終わったよ。森さんも何か相談したい事あるなら三木先生に会うといいよ。それか、メールでも、気軽に送ってみたら良いよ」
「あ、うん。ありがとう」
そういうと森さんは後ろの方の席に戻って行った。
はぁ〜〜驚いた…。少し嬉しかったけれど。
森さんも何か1人で悩んでいる事があるのかな…。
***
結局授業中も、入口の前列席にいる橘くんをチラチラ見てしまって集中できなかった……。
休み時間は特に話しかけられなかったけど、たまに視線は感じた…。(私は本読んでるふりしてた)
そして今、昼食を食べ終えて、橘くんが待っていると思われる廊下に向かっている。
心臓が飛び出るくらい緊張してる……!
階段を降りた先に、彼は居た。
振り向いて私に気づくと手を振ってくれた。
「茜ちゃん、ごめんね手紙なんかで呼び出して…」
「全然、手紙嬉しかったよ」
「…僕ほんと、カッコ悪すぎたよね。試合に勝ったらなんてほざいて、結局負けてさ…」良い所魅せるつもりが…本当にダサかった。。呆れてるよな。
「違うよ」
「え?」
「それは違うよ!勝ち負けなんて関係ない、橘くんはめちゃくちゃ頑張ってたし、すごくかっこよかったんだから、良いんだよ!」
「…ありがとう。茜ちゃん」
僕は右手を前に差し出してこう告げた。
「こんな僕だけど、、付き合ってくれますか?」
少しの沈黙の後、
「…はい、こんな私で良ければ、、」と彼女は照れながら、手を握り返してくれた。
「…やった!!」
僕は嬉しすぎて彼女の手を引っ張って抱きしめていた。「わっ!ちょっと橘くんっ?!重いから!」
「大丈夫だよ。…それよりさ、僕の事、いい加減名前で呼んで欲しいなぁ」と私の耳元で囁いた。
「じゃないと離さないよ」
「…分かった」密着しながらなんて狡い。
「いってみて」
私は恥ずかしすぎて耳も熱かった。。
「……ホープ」
「…僕も、これからは茜って呼ぶね」
「……うん」
言ったら離すと言っていたが、2人はそのまましばらく抱きしめあっていた。
そして今度はすぐに保健室へ報告しに行った。
「貴方達、遂に恋人同士になったのね!お姉ちゃん嬉しくて泣きそう…!」
そこに丁度、三木先生も保健室を覗きに来たので同じく打ち明けた。
「本当に?おめでとう。茜ちゃん、ホープくん」
「ありがとう三木先生!僕、より一層頑張るよ」
「そうね、茜ちゃんを大切にしてね」
「茜を悲しませたら私が許さないからねぇ」と笑って言うお姉ちゃん。
「はい、もし僕が何かやったら殴ってくれて構いません」と言ったホープにお姉ちゃんは面白可笑しく
「あははっ、そんな事があったら遠慮なくボコる!」と言い返していた。
今日の全ての授業が終わり、下校のチャイムが鳴った。私はホープとまた明日ねと言って別れると、下駄箱に向かった。
そして靴を履き替えようと手を伸ばした時、靴の上に小さく、綺麗に折り畳まれた手紙が置いてあるのに気がついた。よく女子同士がやってる手紙交換で見る形だった。
誰だろう…と手に取ると、豊田さんへ。とオレンジ色のカラーペンで書いてあり、裏にはカナミとあった。
森さん?から手紙?何だろう…。
思わず周りを見渡すが、森さんは居ない。
靴を履き替えて、ゆっくり駐車場の方へ歩きながら、しばらく中を読まずに眺めていた。
程なくして、お姉ちゃんが車の方にやってきた。
「ごめん茜、待った?」
私は持ってた手紙を制服のポケットに入れた。
「ううん、大丈夫。帰ろう!」
そして帰ってからも、すぐには読まなかった。
ようやく読もうと思ったのは、ご飯を食べ終えて、お風呂から上がって、一段落した時だった。
寝室に行って、ハンガーに掛けてある制服のポケットから、手紙を取り出す。
そういえば、女子からの手紙も初めてだった。
正直女子は何を考えているか分からない。大体妬みや皮肉な内容か、それとも相談の内容かと色々思いを巡らせながら手紙を開いてみると、2枚重なってあって、綺麗な字でみっちりこう書いてあった。
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