2-8-5 16歳縛り解禁?盗賊の動向?

 菜奈にめっちゃ睨まれたが、未来とこっそり転移魔法でお屋敷に飛んでお泊りした。


 現在未来は俺と一緒のべッドですやすや眠っている。寝顔がめちゃくちゃ可愛いのだが……はぁ。


 今回未来にやりこめられて、これまで守ってきた16歳未満の未成年とはSEXしない、という自ら決めた縛りを破ってしまった。



 ついさっき、こういうことがあったのだ。


 お風呂でイチャイチャした後ベッドに移動し、B的行為で一度お互いに絶頂して横になっていた。暫く俺に腕枕されて放心していた未来ちゃんだったが、不意に俺の上にのってきた。騎乗位の体勢だが、コレはいけない。


「ちょっと未来ちゃん! 本番行為はしないって俺、言ったよね!」

「はい、穂香や沙織からもしなかってって聞いています。ですが龍馬先輩……それは先輩の保守的な事情で、私たち女の子の気持ちを軽視しているのじゃないですか? 3人で話し合って出た結論は、もし王都に着いて結婚する前に別れても、行為前ならこの世界で次のお相手を探すのにセーフだとか、変に私たちを想って考えてないかなって? 違いますか?」


 図星だ……。吊り橋効果でこうなってるのではないかと疑っている自分がいるのは否定できない。そのうえで、彼女たちが後悔しないようにと考えている。


「その通りだね。ハーレムとか正直いうと異常でしょ? 吊り橋効果を否定できない以上、王都に着いて落ち着いてからで良いと思うのは可笑しなことかな? この世界では処女性を重んじるらしいから、できるだけ未成年者は守ってあげたいんだけどダメかな? 心も体もまだ未成熟で、一番精神的に危うい中学生ってことを考えた結果だけど、それでも軽視しているかな?」


「ごめんなさい。思慮深い龍馬先輩が考えた結論なのですね。軽視とか有り得ないですよね」

「俺だっていま未来ちゃんとしたいよ。手や口でイチャイチャするのも良いけど、やっぱり未来ちゃんと繋がりたい……俺だって凄く我慢してるんだよ?」


「じゃあ、我慢なんかしないで最後までしてください! 龍馬先輩の気持ちは嬉しいです。でも、これはちょっと……焦らさないでください」

「未来ちゃんだけしちゃうと、他のしなかった娘に失礼じゃないか。できないよ」


「正直に言うと、私、今日はそれほど性欲はなかったのです」

「えっ? でも、排卵周期に入ったんだよね?」


「はい。でも、性欲より今は明日のことが不安でいっぱいいっぱいです。ウワ~~って叫びそうなほど怖いし、不安だし、落ち着かないです。だから、龍馬先輩に心も体も慰めてもらおうと思ったのです」


 そうだった。明日未来ちゃんには、盗賊を利用して殺人を経験させようとしていたんだった。この世界の危機を救うには、既に邪心の邪気にあてられておかしくなった人たちとの戦闘は避けられない。殺人行為ができないなら、一緒に行動はできないので留守番組に入ってもらうしかないのだ。


 明日、人を殺すかもしれない。不安で性欲どころじゃないか……性欲なんか吹っ飛ぶわな。


「未来ちゃん。無理しなくて良いんだよ。殺人なんか本当はしないほうがイイんだ」

「はぁ~。優しいのは良いですが、やはり私たちのことを軽視しています。殺人をしてでも先輩と一緒に居たいと想っている女の子に対して、吊り橋効果がどうとか処女性がどうのかとか、綺麗ごとなんか言わないでください! もう穂香も沙織も先輩と居たいという理由で人を殺めているのですよ! 好きだと言うなら逃げ道を作らないで、私たちの気持ちにもっと応えて下さい!」


 タメ息の後に言った言葉は強烈な一撃だった。


 普段穏やかでほんわかした娘の痛烈な言葉は良く効く。既に俺と居たいという理由で人を殺めた者がいるとか言われて、穏やかでいられるわけがない。もうとっくに吊り橋効果とか処女性がとか言ってる次元じゃなかったのだ。彼女たちは本気だ。覚悟がないのは俺の方だと未来ちゃんに怒られてしまった。


 殺人ができないなら連れて行けないのは事実だ。でも俺と居たいために手を汚すのは正直辛い。邪神討伐の旅が何年掛かるか分からない以上、俺も一緒に居たいが、その為に汚れてほしくはない。転移魔法があるので何時でも帰ってくることは可能なのだ、だが常に一緒に居たいからといわれては無碍にダメとも言えない。


 更に未来は俺に口撃してくる……。


「明日、万が一私が盗賊退治の時に死んだら恨みますよ。化けて出ます! 今日抱いてくれなかったことを、龍馬先輩が死ぬまで毎晩化けて出て、耳元で『根性ナシ!』って血だらけで言い続けます!」


 どうして血だらけが前提なの!


「ヤメテくれ! むっちゃ怖いから! 未来ちゃんに毎日根性なしとか血だらけで言われたら、それだけで病みそうだ! 貞子より怖いから!」



 それから少し揉めたが、未来の本気に負けてしまった。

 俺が絶対守るからと言っても、『あの世でもこの世でも絶対はない』とか言われるし……未来には何を言っても敵いそうになかったのだ。



 そして行為が終えた後、未来はわんわんと泣きまくった。俺は当然びっくりしたが、落ち着いて泣き止んだ後に理由を聞いて更に反省する羽目になった。


「不安だったので嬉しいのです!」

「うん? 不安? エッチするのが不安だった?」


「違います。フィリアちゃんは別として、龍馬先輩が桜先輩と美弥ちゃん先生としかSEXしないから、なにかと理由をつけて、最終的に私たち中学生組みはやんわり断るつもりなのかなって心配だったのです」


「そんな訳ないだろ。既にもう何人かにエッチなことしちゃってるのに、今更そんな無責任なことはしないよ」

「だって……排卵日で欲情を我慢できない娘は、エッチなことを希望するなら誰でもしてあげるとか龍馬先輩が言うから、凄く不安になったのです。私たちのことも、介護医療的に性奉仕してくれているだけなのじゃないのかと、穂香や沙織も心配しています」


「違うよ! あれは未だ処女で、妊娠適齢期ギリギリな美弥ちゃんのことが心配だったから、美弥ちゃんに対しての発言だったんだよ。未来もそのことは知ってるはずだろ?」


「もういいんです……この世界で処女性を失った私を、龍馬先輩は見捨てたりできない人なので、今は安心しています……」



 そう言って少し泣き疲れたのか、俺の腕枕でスヤスヤ寝始めた。



 未来の可愛い寝顔を見ていたら、俺もなんだか眠くなってきた。

 そういえば、未来にも睡眠導入効果のある個人香のパッシブがあったな―――



  *  *  *



 いつの間にか眠った俺は、軽く揺すられて目が覚める。


「龍馬先輩、おはようございます」


 未来ちゃんが顔を赤らめて朝の挨拶をしてくれる……イイ! 実にイイ! 俺は人に起こされるのは凄く嫌なのだが、未来ちゃんのような美少女に起こされるのはイイ! 目覚めて一番最初に見る者がこんな美少女だと凄く得した気分になる。


「おはよう、あ……俺が抱きしめてホールドしてたので起きられなかったのか? ごめんね」

「いえ、龍馬先輩が起きるまで待とうかと思いましたが、昨日の話しでは皆が起きだす前に帰ろうということだったので……」



 そうだった。未来ちゃんは未だ排卵周期中。当然抑止効果がなくなると発情状態になってしまう。というわけで、押し倒して中だし注入で絶頂を与え、24時間ほどの抑止効果を与えておく……役得だな。



「朝から良いのかな……」

「それこそ、医療行為だよ。24時間の抑止効果確保のためだ」



 お互いにスッキリして現在お風呂に入っている。


「あれ? 今なにか白いモコモコが走っていたような……」

「ハティだね。あいつ俺の気配を探ってきたのか」


「ハティちゃん、そんなことできるのですか? 転移でここにきたので、匂いを辿ったとかじゃないのですよね?」


「俺とハティは見えないラインで繋がっているんだよ。従魔だから俺と魔力ラインが繋がっていて、俺の魔力を取り込むことができるので飢えることとかなくなるというメリットが従魔にもあるんだ」


「従魔契約が成立するのも、ちゃんと従魔にもメリットがあるからなのですね」

「だね。で、ちゃんと主従関係ができているパートナーだと、意識を集中すればある程度の方向と距離ぐらいだけど分かるんだ」


「ハティちゃんはそれを辿ってきたのね。お利口な子」

「どうも朝起きてすぐ、俺の部屋に行ったけど姿が見えなくて、心配になって探ってきたみたいだね」


「ふふふ、可愛いですね。でも、従魔契約すると、相手の行動したことまで分かっちゃうのですか?」

「また違う俺のオリジナルスキルのおかげなんだけどね。詳しい説明はもう少し待ってくれるかな? 替わりにこれをあげるから」


 スキルコピーで【無詠唱】【マジックシールド】【多重結界】、数種の魔法を与え上級まで熟練度を振ってあげる。


「エッ? エッ~~!? ステータス画面に勝手にスキルが増えていってる! しかも全部上級魔法!」

「ヒーラーとして使えそうな魔法はほぼコピーしてあげたよ。戦闘系の技術スキルは【棒鬼】Lv10と【拳鬼】Lv10を振ってあげたから練習するように」


「コピーって……そんなのありなの? フィリアちゃん、龍馬先輩にプレゼントし過ぎてそれで罰を与えられたのじゃないの?」


「エッ!? いやいや、多分違うよ? コレ創ったのフィリアじゃなくて俺だし」

「ヒャ! ハティちゃん?」


「どうした?」


 未来の視線を辿ったら、ハティが浴場の外窓を前足でカリカリやっていた。入れてということだろう。

 仕草は可愛いのだが……ここ2階だぞ。


「このガラス窓、中からは見えるけど外から見えないのに、正確に俺の位置がバレてるな」

「本当に外からは見えないのですか? ハティちゃんあんなに尻尾振って……カリカリする姿可愛い」


 窓を開けてあげると、速攻で飛び込んできた。


『ご主人さま~、ハティをだまって置いて行かないでください~』

「今日は未来と2人だけでデートだったんだよ。最後の最後にハティに邪魔されちゃったけどな」


「龍馬先輩、邪魔とか言っちゃ可愛そうです! 先輩を慕ってここまできてくれたのに!」


 そういえば未来もハティにメロメロだったね。怒られてしまった。


「よし! ハティ洗ってあげよう」


 ハティは優しく体を洗ってもらうのが大好きなのだ。どちらかというと、入浴後のブラッシングが一番好きみたいだけどね。尻尾をブンブン振って喜んでいる。



 念のため、ハティがこっちにいることを伝えておく。


『あ、沙希ちゃん? ハティはこっちにきてるから心配いらないからね』

『良かった~、朝、トイレにと思ってログハウスの玄関を開けてあげたら、凄い勢いでどっか行っちゃったから心配してました』


『朝、俺がそっちに居なかったから、心配してきたみたいだね。朝食を食べたらすぐ俺たちも戻るよ』

『ふ~~~ん、未来先輩と二人っきりで食べるんだ?』


『エッ? いや、ハティもいるよ?』


 苦しい言い訳だった。まさか中1の沙希ちゃんに冷ややかに言われると思っていなかったから、ドギマギと変な言い訳になってしまった。


 朝食をこっちで食べたいと言ってきたのは未来ちゃんだ。

 性欲処理をしてきたのは皆承知なので、朝、同じテーブルについて注目されるのが恥ずかし過ぎるとのことだ。

 確かに他の娘たちも、帰ったその日の朝は恥ずかしそうにしていたな。桜だけはちょっと自慢げにしていたけど。



『……おはようございますマスター。例の商人たちがたったいま町を出発いたしました。盗賊は35人に増え、商人の野営予定地点で待機する手筈になっています』


『昼食予定地点から、野営予定地点に変わったのか?』

『……襲撃予定地点は、まだ確定ではないようです。斥候が3人街道に配置されているので、状況をみながら最終的には決めるようです』


『待機場所が野営地点だと、先に俺たちのほうが盗賊に遭遇するかな?』

『……いえ、距離的にもこちらのほうが野営地までありますので、商人たちが先に到着しますね。町に近いほど魔獣も少ないので、魔獣との戦闘回数もこちらが多いはずです』



 殺人をするかもしれない。勇者パーティーとしても冒険者になるためにも必要なこととはいえ、重いよな。

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