閑話697・『とうぶころころ2』

風で首が転がるものかと罵るが、実際には突起を無くして僅かな斜面があれば風の力で首が転がる。


ころころころ、それは手足どころか胴体を失っても逃げようとする意思のようだ。


耳ばかりか体を失ったエルフの頭部は素早く転がる。


「飯よ、去るな」


『おむすびころころ』


「殺殺(ころころ)はしたけど」


『そのコロコロじゃないよ』


「まてまて」


『追うんだねェ』


「そりゃメインだからな」


それもそうか、でも耳はもう無い。


メインかな。


「頭部がコロコロ」


『どんぶりこ』


「斜面を駆ける様は悪夢だぜ」


『斜面を駆けなくても悪夢だよ』


「いや、駆けるから悪夢だろ」


『いや、生首の時点で悪夢だって』


「?」


『疑問を浮かべるかなァ、そこで』


「?」


『どこが疑問?』


「死んだのが動くから悪夢だぜ、死んだまま生首で放置されてるのは悪夢じゃないぜ」


『あー』


「だよな?」


生きてるか死んでるか。


それだけ。


『もうそれでいいよ』


「?」


どっちも餌だから怖がる必要は無いよ。

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