閑話684・『♀くま』

湖畔の街は相変わらず時間の流れが遅い、体感的なものなのかなとも思うし、そうでは無いのかも。


欠伸をしながら伸びをする、久しぶりにキョウに稽古して貰った、ボコボコのボコボコにされてボコボコ。


痣はすぐに消える、化け物だし、ここ精神の世界だし、それもまた理由が不確かだ、どっち?


「いてぇ」


「そりゃ本気で戦ってくれって言われたらね」


「いてぇ」


「二割だけどね」


「二割?!」


「二割」


俺の横に腰掛けながら告げられた言葉に狼狽える、え、あれで?


化け物だなァ、こわ。


「失礼な事を考えて無い?」


「考えて無い、メスの熊について考えてた」


「へぇ」


「メスの熊」


「ふぅん」


「暴力的なメスの熊」


「――――――――――」


「の事」


「そう」


左右の違う色合いの瞳がゆっくり細められる。


長い睫毛が感情で僅かに揺れる。


メス熊こわ。


「熊め」


「ううん?」


「い、いや、なんでもねぇぜ」


「せめてメスは付けようね」


「―――――――――」


「せめてね」


怖い。

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