閑話666・『虫運命』
どうしてこうもアンバランスなのだろうと思う。
エルフや人間は餌だと認識しているのに道端の虫を踏んでしまった事に心を痛める。
「埋めたげよう」
『そのままにしてても自然に戻るよォ』
「でも土に埋めた方が分解も――――」
『死んだ生物に分解される速度とか関係無いでしょうに』
「う」
『でしょうに』
「でも」
『そもそも虫の命一つにねェ』
森を駆ければ命を無意味に奪う事もある、しかし無意味に奪った命は無意味なまま消える。
亡骸だけでも何とか意味を。
「埋める」
『好きになさいなァ』
「好きにする」
『んふふふふ』
含みを持たせた笑い声は自分のものでも中々に不快だ。
しかし気にしている場合でも無い。
「ほりほり」
『掘るんだ』
「ぽい」
『言ってた割に入れ方が雑』
「ぺむぺむ」
『埋めるんだね』
「ふぅ」
『可哀想に』
「ん?」
『土の中は苦しいよねェ、土の圧迫感と重さ、呼吸も出来無いし』
「し、死んでるし」
『そう、なら埋める必要も無いよねェ』
死んでるし、死んだ後を弄ぶのは人の性。
悪意だろうが善意だろうがねェ。
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