閑話658・『それでもくう』

他者を追い詰めるのは好きな癖に自分が追い詰められると狼狽える。


そんな悪癖のある半身に溜息を吐き出す、エルフに追い立てられる事はほぼ無い。


人間だ。


「うううううううううううううううう」


『――――――――――――』


「ううううううううううううううううううう」


『――――――――――――――――――』


「ううううううううううううううううううううう」


『――――――――――――――――――――――』


「痛いよぉ」


肩に突き刺さった小刀を抜きながら涙を拭う。


仕方無いよねェ。


「いたひぃ」


『よしよし』


「なにもよくねぇ、うぅ」


『あらら』


「うううううううううううううううう」


木の根に蹲って愚痴を吐き出すキョウ、仕方無いので黙って見守る。


血塗れだし、鼻水出てるし。


可愛い。


「うううううううううううううううう」


『――――――――――――』


「ううううううううううううううううううう」


『――――――――――――――――――』


「ううううううううううううううううううううう」


『――――――――――――――――――――――』


ずっと唸っている、項垂れている。


不平不満をぶつぶつ。


もう。


「お腹空いたからもう一度襲う」


も、もう。

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