閑話622・『くさくてうまい』

「エルフを飼うんだったっ」


『え、思い出さなくて良いよォ』


突然の一言に眠気に支配されていた思考が吹っ飛んだ。


思い出さなくて良いのにィ。


「エルフは飼うぜ」


先程エルフを食べたばかりなのに矛盾を吐き出す。


困った娘。


『聞いたよ』


「聞いたなら協力しろよ」


『やだねェ』


「んなぁ?!」


『やだ』


「り、理由を言え」


『やだからやだ』


「――――――――」


ベッドの上に転がるキョウ、驚愕している、硬直している。


事実を言っただけ。


本心だもの。


「エルフは飼いやすくていいペットだぜ」


『臭いじゃん』


「……良い匂いだろ」


『エルフ臭いのはちょっと』


「嘘だろ」


『ご飯臭いペットってやだ』


素直に常識的な事を告げているつもりなんだけど。


どうだろう。


「うまそうで可愛い、お得じゃん」


『お得じゃねぇし』


「えぇぇ」


お得なわけないよねェ。

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