閑話596・『ほんとうそ』

どうあがいても絶望、ぎゅるるるる、近くにエルフの気配は無い。


最悪だぜ、何を食べよう。


「お腹減った」


『この前残さずに食べてればねェ』


「逃がしちゃったぜ」


『それを残すって言うんだよォ』


「逃がした」


『エルフに、餌に人間性を与えるんじゃないよ』


やや厳しめの言葉に顔を顰める、別にそーゆー意味じゃないんだけどな。


そーゆー意味になっちゃうか。


「人間性なんて無いぜ」


『ホントに?』


「でもお腹一杯で味もわからないのに無理矢理食うのは失礼だろう」


『へえ』


「どうした?」


『いや、成長するもんだなぁって少し面食らったよォ』


「バカにするんじゃないぜ」


小馬鹿にされている、その事実が空腹と交わって苛立ちを増長させる。


ぐるるるるるるるる。


「ふん」


『ば、バカにしてないよォ』


「嘘だぜ」


『嘘じゃ無いよォ』


「嘘だ」


『ほ、本当だって』


「本当の嘘だ」


『ひぅ』


「………お腹空いた」


『こ、こっちからエルフの気配するよォ』


「ふん」


媚びてろ。

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