閑話573・『口説き自分2』

「いたっ」


木の枝の先端で指先を切ったようだ、赤い血が滲む。


ちゅぱちゅぱ―――それを一心に舐めるキョウ。


「まずい」


『そりゃそうでしょう』


「エルフの血は美味しいのにな」


『そりゃそうでしょうに』


「ん?『に』が増えただけ?冷たいゾ」


時には突き放した方が良いと思ってついつい怠惰な返事になる。


キョウはエルフの匂いを嗅ぎ分けて笑顔になる。


「くさ」


『言い方、ご飯に対しての敬意』


「しかしよォ、干物とかでも臭いだろ?あれと同じだぜ」


『臭くて美味しい?』


「その通りだぜ」


『………でもキョウも臭いって言われたら嫌でしょう?』


「うん」


『だったらやっぱり止めな』


「うぐ」


『エルフも生きてるんだからさ』


「う、うん」


『物言いには気を付けようね』


「うぅ」


エルフを擁護し過ぎたかな。


餌なんだけどね、所詮。


「え、エルフすき?」


『え』


「すき?」


『……エルフを食べてる元気なキョウが好き』


「う」


口説いてしまう口先が憎い。

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