閑話564・『味のバランス』

「なんだこの死骸」


『理想のエルフらしいよ』


「えぇぇ」


正気に戻ったキョウ、まあ、どっちが正気なのかはわからないけどねェ。


目を瞬かせて不細工なオブジェを見ている、貴方が一生懸命作り上げたものだよ。


死臭と腐臭と煤けた匂い。


「………エルフ?」


『正解』


「の死骸」


『不正解』


「腐生かい?」


あれだけ罵って好き勝手に作り上げたのに全く記憶に無いのか驚いた顔をしている。


歪な死体のお人形。


「いや、これ、何なんだぜェ、こわぁ」


『物スゴク可愛い笑顔で作ってたよ』


「誰が?」


『キョウが』


「――――――――――凹むぜ」


どんよりした空気を纏いながら溜息を吐き出すキョウ。


説教され続けた私の方がどんよりしたい。


「なにを考えてんだ」


『どうするのソレ』


「食う」


影にズルズル引きずり込まれるソレ、食事の音は何だか乏しい。


骨と皮だしね。


「―――――――体に優しい味だぜ」


『ああ、そう』


「――――まずい」


『そりゃそうだ』


理想のエルフは見た目と味が悪い。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る