閑話432・『命名冥々』

「エルフを飼ったら名前どうしよう」


「えぇぇ」


突然の相談、困ったように眉を寄せて本人は本気である、しかし私からしたらそもそも飼うのが問題である。


――――であるが、小屋を建てる約束をしてしまった手前、邪険にも出来ずに腕を組んで相談に乗る。


正しくは乗ったふりをする。


えへへ。


「好きにしなァ」


「じゃあキクタっ」


「待てェ」


「キクタっ」


「ちょっと時間を頂戴」


「?」


「…………正気?」


「正気だぜっ」


「いやもうそれ正気を逸脱して瘴気ダダ漏れだよ」


「キクタっ、可愛いぜ」


「………」


「可愛く無い?」


「可愛く無い」


「……疑問形が無くなったぜ」


「ふん」


しかしここまでクソ幼馴染に依存しているとはっ、恐怖を凌駕する気持ち悪さに戦慄する。


キクタが聞いたら頬を赤く染めて上品に笑いそう、こわっ。


きもっ……背もたれに体を預けながら消えかかる蝋燭を見る。


「キクタ……そもそもいるじゃん」


「あ」


「いるよね?」


「う、ん」


「じゃあ止めようよ」


「………キクタ二号」


不吉な言葉が聞こえた。

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