第450話・『だれよりもーなによりーもきみだけをー』

無数に広がる施設はやがて一定の科学基準を……不可解さに首を傾げる、やはり勇魔の……レイのメスが管理してるだけあって現在の基準を遥かに凌駕している。


呆れる前にここで何を採取していたのか気になる、水晶の破片を見付けたがどうやらそれだけでは無い、それは勇魔のメスが来る以前のものだ、加工技術を見ればわかる。


精鉱を化学的に処理するのは錬金術の範囲だ、その過程で有用な元素を取り出す事を製錬と呼ぶのだがそれは一般的では無い、もっと原始的な方法で一般的には行われる、ササが異常なだけだ。


しかしこの施設ではササと同様の技術で処理が行われている、非鉄金属を対象とする場合が非金属元素は省略されることが多い………そして鉄の乾式製錬の事を製鉄と呼ぶのだがそれもここでは行われている。


「うーん、何でも採取出来る夢の山か」


『冷気で人が死ぬような山を夢の山とは言わないよ、そこ段差』


「おわっ?!」


『お尻打ったら赤ちゃん出来無くなるよォ、しかし凄い施設だねェ』


「そ、それを言うならお腹だろォ」


製錬方法は多様だがこの施設はほぼ全てが完備されている、実用的なものでは無く実験的なもの?首を傾げる、そして機材をぺチぺチ叩く、高温の火力を使って溶融&揮発させて元素を抽出させる乾式製錬。


水銀、アンチモン、鉄、銅、鉛等が主だったものだ、他には薬品の水溶液を使用して精鉱から元素を抽出して分解させる湿式製錬がある、こちらは金や銀などに用いる場合が多いが流石にここでは採取出来無いだろ。


このような過程を得て抽出された元素は溶融して成形と冷却の工程を得て地金になる、しかしこの工程を終えても地金は未だに不純物を多く含む場合が殆どだ、一般的にはそれでも良いが錬金術に用いる場合は高い精度が求められる。


故に装置か錬金術そのもので電気分解して純度を99%以上にして完成させるのがササの正しい手順だ………これを電解製錬と呼称するのだがこれでは『装置』でそれが出来るようだ、最低でもササレベルの知恵者?うーん、こわっ。


ボコって勝てるかなぁ。


「頭良い奴っぽい、後付けの施設えげつねぇ」


『趣味かな?それとも鉱石の魔物でも製造?』


「命を弄ぶ奴は許さねぇ」


『うわぁー、でもキョウの場合食事だから仕方無いよね』


「仕方ねーのだ」


『うんうん、素直なキョウは可愛いよ』


「素直じゃねぇ俺は!」


『可愛いよ』


「こ、怖いんだけど」


『何が?』


奥へ奥へと足を進める、妖精の感知で捉えた気配が徐々に…………前述した金属製錬と同時に硫化分の多い鉱石を採掘する鉱山では硫酸の製造も同時に仕込む事が出来る、硫酸は様々な用途で使える魔法の液体だ、高値で買い取りされる。


そしてこの場所でも行われているようだ、つー事は人類との『やりとり』があるって事だ、勇魔って良くわからん、人間と取引してる、レイ、れい、ならわか、る、あれ?硫酸の製錬工程から出る煤煙は猛毒で鉱害の原因になる。


ササなら錬金術で処理するだろうが此処では『電気集塵機』によって塵を収集しているようだ、この世界には不釣り合いなソレ、明らかに技術の水準がおかしい、魔力で動いているようだ、地脈に流れる魔力を利用している?


ならその地脈に流れる魔力の果てに敵がいる…………ちなみにこの塵も重要な資源になる、少しの処理をすればビスマス、カドミウム、三酸化ヒ素を生産する事が出来る、その為の施設もすぐ近くで確認する。


「金の亡者か」


『レイじゃないよ、あいつはお金に興味が無いから、さあ、あと少しだよ』


「え、じゃあレイは何に、えっと、れい、そう、レイは何に興味があるの?」


『キョウだけ』


おれ、だけ?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る