第384話・『愛情革命奪』
死体の山が転がっている、とてもとても転がっている、沢山の死体だ、沢山の白衣だ。
洞窟を出て、島を出て、組織の本部に足を踏み入れて、殺して殺して殺して、キョウの能力で一夜で組織の支部も全て潰す。
キョウは電光になって空を飛べる、素晴らしい速度、神様がいたらこんな感じなのだろうと夢想する、自然を崇拝する組織は自然に滅びる。
これもまた『自然』だ、キョウが教えてくれた事を突き詰めると自分に少しでも親しみのある存在でそこそこ大きく数のいる生き物を殺す事で『愛情』は完成する。
だとすれば組織を滅ぼすことに戸惑いは無い、支部を一つ潰すとキョウは『キャキャ』と子供のように無邪気に笑う、それが見たいから言われた通りに殺す。
生まれ変わった気分だ、洞窟の中の生き物を殺し尽して途方に暮れた日々……そしてキョウに『外に出て自分を開発した組織を消そうと思う』と伝えた、笑顔が花咲いた、狂気が花咲いた。
魅入られたのは自分だ、殺そうと思った、殺されそうになった、出会いが一般的なそれと比較してまともかどうかもわからない、だけど………肌を重ねてはもう駄目だった。
自分の全てを他者に預けるような快感、その先で少女が泣いていた、自分と同じように一人っきりだ、きっと彼女は自分と違って他人の愛情を認識出来無い、愛する者を並べても愛されている自覚は無い。
それはもう先天的なものだろうと推測する、キョウは自分の内に踏み込まれる事を好んでいるようで嫌っているような不思議な少女だ、だからこそこうやって献上する事で愛を伝える、寂しかった自分を救ってくれた今でも寂しい少女に。
「ひぃいいいいいいいいいいい」
「竜種の混合体っっ、従順さのみが『評価』されたお前が何故っ」
「に、逃げろ、こいつはあれらと同じで暴れれば誰もっ」
「ぁぁぁ」
「ぁ」
「い、言う事がっ、どうして、通じないっっ、お前はっっ、教義に反してまで生み出した恩義をっ」
「こ、ころさないで」
「ころさないで」
「しにたくない」
「ころさないで」
どれもこれも同じような言葉でどれもこれも何も響かない、キョウはたった一言で自分に全てを与えてくれたのにどうしてだろう、どうしてこんなものの為にあそこにいたんだろう。
「殺すのだ」
「死ぬのだ」
「殺さないでと言うから殺すのだ」
みんな同じ事を言うのでちゃんと返答して殺してやる、大きな動物、そこそこ親しみのある組織の動物、数も沢山いる動物、殺す以外の理由が見付からずに殺す、背後に立つ少女が喜ぶように。
狭い洞窟を抜け出して見ればこんなにも自由が溢れている……腕を振るう、尾を振るう、竜種の怪力は人の生活する場を容易く破壊して逃げ場を無くす、抵抗する者を殺すとキョウはもっと喜ぶ。
だから抵抗するように少しだけ傷付けて様子見をする、重傷を負わすと抵抗する気が無くなるようだ、だから軽く傷付けて殺す。
それをどれだけ繰り返しただろう。
キョウも殺している、人を。
愛を伝えてくれるのだ。
「良い子だ」
キョウが笑いながら手を差し出す、ああ、みんな死んだのか、じゃあまた……人間と親しくなって、顔見知りになって、キョウの為に殺さないと。
手を差し出し、皮膚の境目が融解する、キョウの腕に吸い込まれる、ぁぁぁぁぁ、そうか、そうなのだ、セックスの先がコレなのか、もっと一つになる事。
成程なのだ。
「もっと色々教えて欲しいのだ」
もっと教えて。
永遠に。
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