第383話・『生き物の殺し方と三つのおさらい、オサライ』

美しい生き物だ、シスターは美しい、しかし彼女はそれ以上に美しい。


奇妙な程に心惹かれる、何より初めて自分と一緒にいてくれる存在、何もかもが新鮮で何もかもが素晴らしい。


巣穴に帰れば自分では無い誰かがいる、その事があまりにも新鮮であまりにも特別で慣れる事は無く口元がゆるんでしまう。


最初は殺されかけたのにどうしてこうなるの?他者との繋がりが無い自分にはその理由がわからない、流されるままに共同生活を始めた。


彼女は、キョウは、色んな事を教えてくれる、色んな事を伝えてくれる、色んな所を触ってくれる、尻尾は敏感なので遠慮しているようだが別に触っても良いのに。


キョウが誰かの為に命を奪う行為がこの世で一番尊い行為だと教えてくれた、なるほど、納得しか無い、命はこの世界で一番尊いのでそれを誰かの為に奪う行為はより尊い。


キョウの為に命を奪う事は素晴らしい事だと学習した………キョウは花咲くように笑う、いや、花よりも美しく咲き乱れる、だから奉仕する事に抵抗は無く、故に共同生活も楽しい。


しかし奪える命には限りがある事を知る、キョウは虫を殺すよりもトカゲを殺す事を好む、トカゲを殺す事よりも獣を殺す事を好む、大きい生き物を殺すと沢山微笑みかけてくれる。


学習する、そうだ、うん、少しずつ仕組みがわかる、世界の仕組みとキョウの仕組みを紐解きながら愉悦に塗れる、小さい生き物でも沢山殺したらキョウは凄く喜んでくれる、そう、足りなければ数で埋めれば良い。


また学習する、だったら大きな生き物を沢山殺せたらキョウはもっと喜んでくれるのかな、わからない、あとキョウは自分の知っている生き物を殺すと喜ぶ、つまりは三つのポイントが大事なのだ。


大きな生き物を殺す、沢山殺す、より親近感のある生き物を殺す、この三つを同時に行えばキョウはずっとここにいてくれるはず、もう一匹では無い、ずっと二匹で生活出来る、だからこの三つのポイントを―――。


だから実践した、大きな生き物を殺した、自分の知っている一番大きな生き物はドラゴンだがキョウはそれを嫌う、だとすればやはり……外から自分に会いに定期的に来る『人間』はどうだろう、自分にとってそこそこ親しい。


親しい生き物を殺せばキョウは喜んでくれる、しかも大きい、予感は的中でキョウは今まで見た事の無い様な笑顔で喜んでくれた、そして、そして、そして、ああ、抱いた、抱かれた?わからない、どれが正解なのかはわからない、でも一つになった。


嬉しかった………単一種である自分には必要の無いものだと理解していたが、幸せだった、幸せ過ぎた、そしてその先に虚無を見た、キョウは頬を赤くして乱れながらも……寂しそうだった、そう口にしたら凄い目で睨まれた。


アレはなんだったのだろう。


「殺せ」


「俺の為に殺せ」


「俺の為だけに殺せ」


「大きい生き物を殺せ」


「沢山殺せ」


「親しいと感じたものは全て殺して献上しろ」


「そうしたらまた抱いてやる」


「抱かれてやる」


「殺せ」


「寂しい?」


「え」


「え」


「あ」


「さみしく、ない」


小さな女の子が泣いている。


だから彼女の為に言われるがままに生きようと思った。


そう思ったのだ。

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