第2話 本場の品

 長崎について早々問題が発生した。

 空腹で死にそうなのだ。どこか長崎の名物が食べられるお店に入ろう。目についた看板には「長崎名物 長崎ちゃんぽん! 皿うどん!」と大きな文字で書かれていた。

 ここでいいか。そして私は名もなき店へと足を踏み入れた。

 

 「お待たせいたしました皿うどんでございます」

 いかにもアルバイトといった風体の青年がお盆に皿うどんと取り皿と箸とを乗せて注文した品を持ってくる。

 「高校生?」

 私が訪ねると、

 「ハイ! 十八になります」

 青年は元気に答える。

 「それじゃあ、高校三年生になるんやね」

 「いや……それが……」

 青年の歯切れが妙に悪い。

 「どうかしたの?」

 「ええっと……まあ、いいか。オレ馬鹿だから留年決定してるんス」と照れ笑いを見せる。

 「あれまぁ、そうやったとね。変なこと聞いてしもうて悪かったねぇ」

 青年は「いえ、オレが馬鹿なのが悪いんすよ」と今度は高笑い。

 「でもアンタいい子やから大丈夫よぉ」

 慰めでもない率直な感想である。

 「ありがとうございます!! では何かご用がありましたら気兼ねなくお呼びください」

 青年は元気にお礼と従業員マニュアルの二つを述べると踵を返してスタッフルームへと消えていった。

 残されたのは芳ばしい香り立つ皿うどんと一つの疑問符。

 「これが本場の皿うどんなんかぁ」

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