――冬。



私は、枝にうっすらと雪が積もった桜の森を眺めていた。


あなたがいなくなってから、もうどれぐらい経ったのだろう。

最近は、その日数を数えることもなんだか憂鬱になってきた。

おそらく、8ヶ月は過ぎただろう。

桜の森は、あの時とすっかり姿を変えてしまった。

ピンク色の花びらが存在しない桜の森は、私とあなたとの思い出を完全に消し去っていた。


そして、最近、私はショックなニュースを耳にした。



彼が結婚するらしい――――



どうやら、彼より少し年上の女性。

彼と同じくトップアイドル。

だから当然、世間は、その話題でもちきりだった。


あぁ、結婚する。

彼が結婚してしまう。


私は、いつもの公園で桜の森を見上げていた。


なんだろう。

なんだか、全く別の木に見えるな。

あなたとの思い出がたくさん詰まった大切な場所には思えないな。


ピンクの衣装を身にまとっていない桜の森からは、彼との楽しかった思い出を呼び起こすことは、どうしても困難だった。


あぁ。

やっぱり、あの約束は軽いジョークだったんだね。



桜の森の満開の下で、また逢いましょう――――



あれは、エイプリルフールの軽いジョークだったんだね。


ハハッ。

馬鹿だね、私は。

そんな言葉を真に受けるなんて。


ごめんね。

もっと早くに気づくべきだったね。


でも、私はあなたを責めることなんかしないよ。

だって、エイプリルフールは、嘘をついても許される1日だもん。


だから、

だから、私はあなたのことを忘れます。





雪の積もった桜の森の木の下で


私はあなたを忘れます


忘れることを誓います



もう、待たない


あなたのことを待たないと






心に強く決めました







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