④
――冬。
私は、枝にうっすらと雪が積もった桜の森を眺めていた。
あなたがいなくなってから、もうどれぐらい経ったのだろう。
最近は、その日数を数えることもなんだか憂鬱になってきた。
おそらく、8ヶ月は過ぎただろう。
桜の森は、あの時とすっかり姿を変えてしまった。
ピンク色の花びらが存在しない桜の森は、私とあなたとの思い出を完全に消し去っていた。
そして、最近、私はショックなニュースを耳にした。
彼が結婚するらしい――――
どうやら、彼より少し年上の女性。
彼と同じくトップアイドル。
だから当然、世間は、その話題でもちきりだった。
あぁ、結婚する。
彼が結婚してしまう。
私は、いつもの公園で桜の森を見上げていた。
なんだろう。
なんだか、全く別の木に見えるな。
あなたとの思い出がたくさん詰まった大切な場所には思えないな。
ピンクの衣装を身にまとっていない桜の森からは、彼との楽しかった思い出を呼び起こすことは、どうしても困難だった。
あぁ。
やっぱり、あの約束は軽いジョークだったんだね。
桜の森の満開の下で、また逢いましょう――――
あれは、エイプリルフールの軽いジョークだったんだね。
ハハッ。
馬鹿だね、私は。
そんな言葉を真に受けるなんて。
ごめんね。
もっと早くに気づくべきだったね。
でも、私はあなたを責めることなんかしないよ。
だって、エイプリルフールは、嘘をついても許される1日だもん。
だから、
だから、私はあなたのことを忘れます。
雪の積もった桜の森の木の下で
私はあなたを忘れます
忘れることを誓います
もう、待たない
あなたのことを待たないと
心に強く決めました
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