――秋。



私は、緑色の葉が散り始めた桜の森を眺めていた。


5ヵ月と27日。

彼が私の側からいなくなって、もう半年近くが経とうとしていた。

桜の森の木々たちの変化は、否応なしに、私に時間の経過をもたらしてくる。


ちなみに私は、今も同居人と暮らしている。

でも、相手は変わった。

今度も男性だ。

前と同じく、管理人さんの紹介だった。

誠実でいい人だけど、恋愛感情はもちろんない。


なぜなら、私が恋をする相手は彼以外にいないから――――


最近、こんな噂話を聞いた。

都会に出て行った彼。

彼はどうやら、華々しい世界に飛びこんだようだ。

誰もが羨む憧れの世界。

彼はその世界で、アイドルになっていた。

みんなから、キャーキャー言われる存在。

見る者に、夢や希望を与える存在。

まさに、今、人気絶調のアイドルになっていた。


本当は、私も祝福してあげたい。

すごいね。

頑張ったんだね。

と、笑顔で拍手をしてあげたい。


でも私は、その気持ちとはうらはらに、胸がチクリと痛んだ。

彼は、華やかな世界で活躍している。

みんなの憧れの的として、頑張っている。

これからも応援するのが当たり前なのだろう。


でも、できない。

私にはできないよ。

あなたが、遠くへ行ってしまう。

どんどん、遠くへ行ってしまう。

あなたが活躍すればするほど、私の恋心は増すばかり。


叶わない恋――


やっぱり、あの時の約束は嘘だったの?

エイプリルフールの軽いジョークだったの?


でもね、それでもいいんだ。

私は待ってるから。

だって、私はあなたが好きだから。

あなたに恋をしているから。


葉っぱの落ちた桜の森は、冷たい風に揺られて、なんだか寂しそうなダンスを披露していた。




私は待っています


桜の森の満開の下で


私は、あなたを待っています




ずっとずっと、待っています






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