――夏。



彼と別れてから、もう4ヶ月が過ぎた。

あれから変わったことがひとつある。


私に同居人ができた。

今は、その同居人と2人で住んでいる。

ちなみに、相手は男性。

と言っても、別に恋愛感情なんかはない。

実は、部屋を引っ越した時、管理人さんの紹介でいま流行りのルームシェアってやつを体験している。



桜の森の満開の下で逢いましょう――――



私は、今でもその言葉だけは忘れられない。


私と彼は、以前、同じアパートで隣同士に住んでいた。

壁1枚を隔てた部屋で隣同士だった。

だからかな。

距離が近かったからかな。

仲良くなるのに、時間はかからなかった。


きっかけは、そのアパートに隣接する、緑が生い茂る公園。

そこで、私たちはよく出会い、お互いのことをもっと知りたくなった。


恋。


それは、明らかに恋だった。

でも、私たちは恋をするには、お互いが幼すぎたのかもしれない。


私は、彼が好きだった。

おそらく、彼も私が好きだった。


でも、別に体を求め合うことはなかった。

ううん、違うか。

ただ、一緒に居られればそれでいい。

それだけで幸せだったのかもしれない。


私たちは、その公園でよく待ち合わせをした。

時には、芝生の上に寝転んで、じゃれあったり空を見上げたりもした。

それは、決まって、大きな桜の木の下。

1本だけじゃない。

5本か6本の桜が密集していた。


春になると、とても美しい。

淡いピンクの花ビラが、日光を浴び風に揺られて、それはそれは、私と彼の心にとても素晴らしい癒しと輝きを与えてくれた。


ある日、その桜を見ながら彼が言った。



ここは、まるで『桜の森』みたいだね――――



と。



私は今日も1人、この公園に来ている。

そして、芝生に寝転がり、桜の森を眺めていた。

でもそこに、ピンクの花びらはなかった。

変わりに、緑の葉っぱとセミたちのオーケストラが君臨していた。


そうなんだ。

時間は、私の気持ちとは関係なしに、とめどなく流れていく。

そして、その移り変わる光景が、あなたと別れてからの月日を物語っていた。




私は、待っています

桜の森の満開の下



もう一度

あなたに逢えることを



ずっとずっと待っています




いつまでも、いつまでも



ずっと、あなたを待っています





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