2
この春、
さらさらと風に吹かれ
美容室の店員にも
容姿をいえば特出すべきなのはその髪くらいしかない。顔の造形は中の中。日本人特有の低身長。モデルのような細身と続けられればいいのだが、そうもいかないのが悲しいところ。
そして、彼氏いない歴が年齢と同一……ではなく、少々色々あって年齢の方が少ない。説明すると長くなるので、ここはひとまず流しておくに限る。
今は、大学生活が始まって最初の大型連休。
両親といくつかの取り決めはあるものの、大学近くのマンションで一人暮らしを始め、大学の雰囲気や授業の時間割にも随分と慣れてきたところだ。
近くのショッピングモールで買い物を済ませ、帰宅した美夜はなんの気なしに郵便受けを
「……なに、これ」
所狭しと
ここまでギュウギュウに入れられていると、恐怖というより、よくこんなに入れられたな、と感心の方がまず先にくるのだから、人間の感覚というものは不思議だ。まぁ、この場合、
その中の一通を取り出し、宛名を見てみると、そこに書かれていたのは届くはずのない存在のものだった。
“マクシミリアン・ルエル・ブラッドフォード”
美夜が知る最初の頃といえば、筆記体とはいえ、まさにみみずがのたくったような字を書いておずおずと見せてきたものだというのに。
ただ、
もう一通手に取ってみると、これも同じ宛名。もう一通……同じ宛名。
見ると、封筒全てに宛名の人物が使っている
「……なんだか嫌な予感しかしないんだけど」
美夜は買い物袋を
《親愛なる ミヤへ》
書き出しの文はそう
実に形式的ではあるものの、そういえばあの子はこういうことに関して真面目な子だったと、クスリと笑みを
問題はその後だった。
《彼の様子が本当にまずいんだ。もしかすると、禁じられた
それから
ミヤの部屋を片付けさせないのは序の口で、毎日日記をつけており、その内容が人様には言えないようなものである。コーコーのセーフクを着たミヤの姿絵を肌身離さず持っている。ミヤの匂いがついたドレスをクローゼットに入れ、一時間に一回はどんなことがあってもそこに
(……んん? 高校の制服なんて、前に向こうに行った初日にしか着てない、はず。なのに、なんで高校の制服着た私の姿絵なんか……)
つぅっと冷たいモノが背中を撫でたような感触に、美夜は薄ら寒いモノを感じた。
そして、極め付けはこうだ。
《また、君を呼ぼうと思う。ごめんなさい》
ごめんなさいという謝罪の言葉が目に入った時、美夜の身体が光を帯びだした。
(……え。ちょ、冗談でしょ!?)
覚えがあるその光景に、美夜はいかに手紙の主が思い詰めてのこの行動だったかを、改めて思い知ることになった。
さっきの“彼”の奇行というより、もはや変態行為を聞いておいてのこのこと姿を
しかし、その光は無情にも抵抗する術を持たない美夜をこの世界から連れ出した。
残されたのは、からからと風に揺らされ動く郵便受けの
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます