第14話 押す 20100504




一番前の席に座って

雨の中走るバスに乗っていた



坂を登りきる寸前に

エンストしたみたいに停まってしまった



私はすぐ運転手さんに言って

ドアから降りて後ろにまわりバスを押した




たいした力もいらず

バスは前進し坂を上りきった



登りきった先で待っていたバスに乗り込むと

私の後ろの席の男の人が

私の座席に置いておいた荷物をいっときもって

座りやすいようにしてくれた



その人はバスの中にいたはずなのに

雨に打たれたように濡れていた


座った私は『ありがとう』と言ってその人から荷物を受け取る



またバスが走り始めたから

私は前を向いて前方の大きな窓から見えるその先を見つめた




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