『Recapture the peace 』IFの世界線

ライガ

第1話「始まり」

どこかの一室

そこにしかめっ面で座る男が一人。

しきりに時計を気にしながらもただひたすら扉の方を向いてじっと待つ。


コンコン

短いノック音とわずかな間が生まれる。


「入れ。」


彼はそういうと少しほっとした表情をする。

彼は思った。

あぁ、今日は遅刻じゃないんだな。と


「失礼します!!」


扉を開けて入ってきたのは齢17歳ぐらいの少女だった。

しかしその身なりはまるで軍隊かのようなベストに防弾チョッキ、そして腰に光る拳銃。

そう彼女もこの秘密結社『TPW(テプワ)』の一員なのだ。

平和を掲げるこの秘密結社の中でも相当な腕をもつ彼女はその仕事ぶりもすさまじい。

まだ若いのに。そう思う彼のような指揮官もいるが・・・


「お呼びでしょうか!!」

「あぁ、まぁ先に、前回の任務、ごくろうであった」

「ハッ!!!」

「前回からそう日は経っていないが新たな任務を引き受けて欲しい」

「上官、そこは引き受けろ。で構わないんですよ?」

「ははっ、君にそんなことは言えんよ。それで?」

「了解しました!必ずや任務を遂行いたします!」

「そう言ってくれるとうれしいね。」


上官と呼ばれた彼は冗談めかした笑いをしながらも一枚の写真を少女に渡す。

そこには野球を楽しそうにやっている少年の姿が映っていた。


「これは?」

「お察しの通り今回のターゲットだ。と言っても何も殺せって物騒な話じゃない。このターゲットであるタカヤという少年を守ってくれ。」

「それはまた・・・何かに狙われているのですか?」

「実はな、この東アジアエリアで最も強大で凶悪なテロリスト集団、『影の刃』というテロリストが彼を狙っている。」


その言葉を聞くと少女は一瞬驚いた表情と少し嫌そうな表情を見せると、すぐにいつもの凛々しい表情へと戻し、携帯している拳銃を強く握る。

彼はその動作を見ただけでやはり彼女もまだ若いのだなと微笑ましく思うと同時にそれだけ『影の刃』が驚異的な存在だと認識していることに安堵を感じた。


「まぁ細かいデータはあとで端末に送る。この任務にあたって今日から君は学生になってもらうよ」

「が、学生!?ですか・・・しかしなぜ今更学校になど・・・」

「要人の身辺にいないと守れないだろ?まぁそういうことだ。君にとっても悪いことばかりじゃないぞ?なんせ君の妹君もいるんだからな」

「悪いことばかりでしょう・・・私の正体は隠してるんですよ?ましてや行方不明だなんて・・・私激昂くらうじゃないですか・・・」

「ハッハッハ!それぐらいの感動の再開があってもいいじゃないか。おっとそろそろ時間だな。あぁそうだ。お前の茜は少し手を加えておいたぞ」

「ハッ!それでは私も失礼します。」

「あぁ。健闘を祈る」


そう言って部屋を出る少女。

その背中を見ながら覚悟を決める男。

しかしながらこれはまだ日常の一コマにすぎない。

それを知っているのはまだ誰もいない。

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