第16話 襲撃②

突然の魔獣襲撃に案の定、会場はパニックに陥った。そんな中、溝口は的確に


「慌てるんじゃない!皆、礼装を纏え!自分の身を守る事を最優先するんだ!」


そんな溝口の指示を冷静に聴けた者は少なかった。大半の生徒は慌てふためき、ただ逃げ惑うだけだった


「クソ!何がどうなってやがるんだ!」


玄は毒づくと礼装を纏い、自分の身を守ろうとした。しかし、ふと気づいたことが


(そういえば、燈華と翔斗はどこだ…)


そう、あの兄妹がいないのだ。2人を探そうとしたその時


「霊装 六花弐色 《落椿おちつばき》」


聞き覚えのある声が響き渡った

声の方向を向くと

そこには紅く美しい椿があしらわれた和装を纏った少女がいた

右手には刀身が緋色に輝く刀を持ち、髪は白く輝いている


「燈華…なのか?」


何度見てもその少女は燈華の顔をしていた

少女は玄の方を向き


「あ、玄くん。見てて、こいつパパッと片付けるから」


そう言うと少女は刀を構えた

その瞬間、ほとばしるような闘気が辺り一帯を包み込んだ


魔獣も尋常じゃない気配を感じ取ったのか

燈華の方へと足を向けた

すると、真っ直ぐ燈華へ突進してきた


それを読んでいたのか

燈華は軽く身を逸らし、突進を回避した

そして、魔獣の後ろへ回り込むと


「神刻流 剣術 《蒼閃そうせん》」


横一文字に刀を薙ぎ払った

すると、魔獣の巨躯はいとも簡単に吹き飛んだ


「す、凄すぎる…」


玄はただ見ている事しかできなかった

魔獣があっけなく倒されたのもそうだが

何より、燈華のあの動き。あの動きは相当戦い慣れしてないとできない動きだ。それを高校生で、ましてや、か弱そうな少女がやっているのだ

玄がそんな事を考えていると


「玄くん危ない!」


その声を聞き、後ろを向くと、先程倒された魔獣の仲間が俺に向かってきている

迎撃しようにも間に合わない

もうダメかと思った矢先


「ダメだよ、よそ見してちゃ」


魔獣に電撃が走る。魔獣は跡形も無く消し飛んだ

魔獣がいた場所に誰かが降りてきた

とても綺麗な金髪に、全てを包み込む海のような碧眼。服装はラフだが、不思議と軽い感じはしない


燈華も俺の元へと降りてきて


「あ、レン」


「おっす、燈華。久しぶりにその姿を見たな。3年ぶりくらい?」


「だいたいそんな感じー」


とても戦場でする会話とは思えない

それに耐えかねて玄は


「あの、助けてくれてどうも。この礼はいずれ」


「いや、いいよ。魔道士として当然のことをした迄だよ」


「燈華、そういえば、翔斗は?」


「そうだ、俺もあいつがどこにいるか気になっているんだ」


玄とレンは燈華に問いただす


「それ、聞くまでもないと思うけどなぁ〜。まあ、魔獣を使役してるヤツのところだよ」


それを聞いて玄は思わず


「大丈夫なのか?いくら翔斗でも1人で魔獣を操ってるヤツとなんて」


そんな疑問に燈華ではなくレンが


「大丈夫だよ。翔斗なら魔獣使い1人くらい数秒もかからず倒せるよ」


「む…だったらいいのだが…」


「玄くんがそんな心配したって無駄だよ。お兄ちゃんは誰が相手でも負ける事は絶対ないから」


燈華とレンの言う事を今は信じるしかないらしい。玄はおとなしく待つことに決めた

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