第14話 トーナメント⑧

試合もいよいよ決勝を残すのみとなった

俺はどちらの応援をすればいいのか正直迷っている。何故なら、決勝は翔斗と燈華の兄妹対決だからだ。他の生徒もまさか決勝が新入生二人とは思わなかっただろう

まぁ、二人とも圧倒的な実力で上級生をものともせずに勝ち上がっていき、案の定こういう結果になった

ふと、玄は思った。燈華は翔斗に10回やって1回勝てるかどうかと言っていたが実際はどうなのか。そういう興味も含めて、この試合がとても楽しみだ


そうこうしてるうちに準備が整ったらしく

二人がフィールドに出てきた

二人ともまだ魔装は纏っていない


少しして、アナウンスが入った


「これより、決勝戦。紫ノ宮 翔斗対紫ノ宮 燈華の試合を始める。両者、魔装装備」


二人は同時に軽く息を吸いそして


「「霊装 六花参式 《天百合》」」


二人を光が包み込んだ。そして、再び現れた時には二人とも戦装束を纏っている

生地の色は違うがどちらも百合をあしらった和装。二人が揃って纏っている光景は、とても優美な雰囲気を醸し出している

そんな二人が刀を手に取った

燈華はシンプルだがとても美しい長刀

一方、翔斗は無骨だが底知れぬ雰囲気を放っている長ドス


そして二人とも構えた

燈華は刀を抜いて中段で構えている

翔斗は刀をしまったまま右手を柄に添えている


構えたのを確認すると


「試合開始!」


その瞬間二人の姿は消え同時に刀同士がぶつかりあった音が響いた

とてつもない衝撃だ。会場全体がビリビリと揺れている

そんな驚きもつかの間、燈華はすぐに刀を返して下段からの逆袈裟を放った

翔斗はそれを紙一重で避けると避けた体勢のまま刀を振るった。燈華も超人的な反応速度で刀を受け止めた

あまりの激しさに俺は驚くことしかできない

動きを目で追うのが精一杯だ

刀を受け止めていた燈華がとんでもない力で翔斗を押し返した。吹っ飛ばされた翔斗は俺の時にやったみたいに刀を燈華目掛けて投擲した

受け止めようとしたが燈華の刀が弾かれてしまった。それを逃さまいと翔斗が突っ込む

燈華もそれを向かい撃つべく体勢を整えた


刀はまだ宙を舞っている

そして翔斗は


「神刻流戦闘術 弐式 《呉月くれつき》!」


下段から蹴り上げを叩き込む


「神刻流戦闘術 弐式 《雛月ひなつき》!」


それを迎え撃つべく、燈華は上段からの蹴り下ろしを繰り出した


そして、互いの蹴りが交差しぶつかりあった

その瞬間、凄まじい衝撃波が会場全体に走った

俺はあの蹴りをくらってよく無事だったなと自分の頑丈さに感心せざるをえなかった


二人はすぐに距離をとって

ちょうど落ちてきた刀を再び手にし、お互いを斬るべく最大の斬撃を繰り出そうとしていた

翔斗は刀を納刀し、燈華は刀を上段で構え


「神刻流 剣術 《光閃ひせん》」


「神刻流 剣術 《閃槌せんつい》」


翔斗は刹那の如き速さで刀を抜刀し

燈華は渾身の力で袈裟斬りを繰り出した

刀同士が衝突

その瞬間


パキィ


二人の刀に亀裂が入り、そして粉々に砕け散った

これでは試合は続行出来ない


溝口は


「この試合、引き分けとする」


兄妹による凄まじい攻防劇は引き分けで幕を閉じた

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