第5話 入学式④

「これより、聖ヶ丘魔道学園の入学式を始めます」


進行役のかったるそうなアナウンスで入学式が始まった。

この聖ヶ丘魔導学園は名前の通り、魔道士を育成するための高校だ。創立6年の新設校だが、既に多数の優秀な魔道士を輩出しており、毎年、大量の入学希望者が押しかけている

しかも、この学校は来るもの拒まず。入学希望者は全員合格にするというかなり思い切った事をやる。だが、それゆえにこの学校を生き抜くのは至難の業で、入学した者の9割はやめていくというかなりハードな学校なのだ

生き残った残りの1割の者だけが魔道士としての道を拓いて行く。その1割に残るために生徒は死にものぐるいで努力し、時には他者を蹴落とす

とまぁ、そういった情報が載っているサイトの内容を思い出しながら校長先生の話を聞いていると


「ねぇ、お兄ちゃん」


「ん?どうした?」


「眠い」


「お前なぁ…」


燈華が早くも退屈そうである

それもそのはず。元来より、校長先生の話は長いと相場が決まってる。もちろん、この学校も例外ではなく、かれこれ30分は話している


「もう少しの辛抱だ。頑張れ」


「うぅ〜、遅くまでゲリライベやったせいだ…」


「お前、単純に寝不足なだけだろ」


「そういうお兄ちゃんだってちょっと眠たげだよ」


「俺は毎朝こんなんだ」


そんな何気ない会話をしてると


「以上で私の話は終わります」


校長の長ったらしい話がやっと終わったらしい

他の生徒達も既に疲れきっている


「やっと終わった〜」


「まだ入学式は終わってねぇぞ」


「むぅ〜、わかってるよ〜」


そんなやりとりをしていると


「続きまして、訓練官代表の溝口二佐からお話があります」


その瞬間、場の空気か引き締まった


「ああ」


そういうと、溝口なる男は壇上へと出た


「私が訓練官代表、溝口哲哉二佐だ」


「マジかよ、二佐だって」


「へぇ、偉いの?」


そんな話し声を無視して溝口は


「皆、入学おめでとう。だが、数ヵ月後には半分近く減っているだろう」


会場にざわめきが走った


「魔道士の世界は過酷だ。生半可な気持ちのヤツは真っ先に死ぬ。そんな世界で生き抜く覚悟がないヤツはもう帰ってもよろしい」


早速、みんなの不安を煽る発言。だが、過酷なのは事実。僕と燈華はそのことをよく知っている


「ほう、誰1人帰らないということはそれなりの覚悟はあるようだな。よろしい。早速だが、皆の実力が知りたい。そこでだ」


一旦、間を置き、そして


「これからこの学校の全校生徒と君ら新入生を含めた、トーナメント戦をしたいと思う。ちなみに、毎年恒例だ」


会場内が一気にどよめいた


「じ、冗談じゃねぇ!」


「嘘でしょ、在校生の人に勝てる理由ないじゃない!」


そんな泣き言が四方から聞こえてくる

そんな中、燈華は


「やった、やっと楽しくなりそう」


「嬉しそうだな」


「いつまでもつまらない話聞くよりはマシでしょ?」


「まぁ、そうだな」


実際、僕にとってもありがたい

ちょうど、この学校のレベルが知りたかったところである


「静かに。日時は明日だ。しっかり準備しておくように。魔装を装備するのはもちろんアリだ。そうでもしないと皆の実力がどういったものかわからんからな。それでは、解散!」


そんな溝口の一言で入学式は閉幕を迎えた

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