第2話 入学式

僕ら2人は30分早く学校に到着した

早く来すぎたかと思ったが既に来ている

新入生らしき生徒が何人かいたので安心した


「お兄ちゃん、緊張してる?」


燈華がイジワルな表情でこちらを見ながら聞く


「まあ、人並みにはな」


実際、こういう行事はそこまで好きではない

何故かって?僕らには入学を祝ってくれる

家族がいないからだ

両親は僕らが4歳の時に2人とも亡くなってしまった。それからはおばさんの家に住まわせてもらい、中学に上がってからは、実家に戻り、2人で生活を始めた

普通、中学生はまだまだ親の世話になる年代だが、その時から僕らは大人同然の暮らしをしてきた。生活費等は任務でなんとかなっている


「ふーん、そうか〜。私もちょっと緊張してる」


はにかむように妹が笑う


「さて、さっさと教室へ行こうぜ。ちゃんと教室確認しろよ?」


「もう、わかってるよ〜」


ふてくされたように頬をふくらませる妹

なんて可愛らしい


「同じクラスだといいね」


「兄妹で…ましてや双子が同じクラスって

そうそう起こり得ることじゃないぞ?」


「わかってる。それでも、一緒になった方が気楽でしょう?」


「まあ、確かに」


そんな事を話しながらクラスを確認する


「えぇっと…1-Cか。燈華は?」


「えへへ、私も同じだよ♪」

なんとびっくり。本当に同じクラスになってしまった


「本当になるとはな…」


「えぇ〜?お兄ちゃん嬉しくないの?」


「そりゃあ、嬉しいさ。ただな、本当になるとは思わなくてな」


「細かいことは気にしない気にしない♪

さ、クラスに行こっ」


そう言って僕の手を引っ張る燈華


「おい、待て、引っ張るなって」


つまづきそうになりながらもしっかりと妹の手を握る。ちっちゃくて、とても暖かい手を


しかし、その時


「「!?」」


僕らは突然放たれた魔力を察知して、咄嗟に臨戦態勢をとった


「感じたよな?」


「うん、しかもこの近くだよ」


「クソ…、こんな時に…」


「でも、すぐに消えたから今のところは大丈夫だよね?」


「今のところは、な」


僕らは一旦、臨戦態勢を解除した


「とりあえず警戒はしておこう。燈華はいつでも戦えるように準備をしておいてくれ」


「お兄ちゃんは?」


「僕は避難経路の確認。あとは、レンに知らせておく」


「そうか、レンもこの学校なんだものね」


僕はスマホを取り出し、レンに連絡をとった


「もしもし?レン?」


「おう、翔斗。さっきの魔力の放出の件だな?」


「そうだ、話が早くて助かるよ」


「確かに俺も感じた。多分、あの感じだと…」


「…魔獣」


「レベルは?」


「ちょうど半分の5というところだな。問題はないと思うが警戒はしておいてくれ」


「りょーかい。にしてもよ、魔獣の1匹くらい、新入生や在校生達でも大丈夫だと思うが?」


「彼らは戦闘慣れしてないからね。いざという時は体が動かないはずさ」


「だよな〜。まあ、警戒はしとくぜ」


「よろしく頼むよ」


「あいよ、隊長」


そう言ってレンは通話を切った


「どうだった?」


「警戒はさせておいた。ここの人たちに危険が及ぶわけには絶対にいかないからね」


レン…鈴谷レンは僕らとは10年来の付き合いだ

それ故にこういう緊急事態はレンと連携するこ

とも多い


「お兄ちゃんは戦うの?」


「可能な限り避けたいな。世間様き顔が割れるのは避けたい」


「わかった。大丈夫だと思うけどお兄ちゃんも

一応、ね?」


「わかったよ」


「さ、とりあえず教室行こ?」


「そうだな」


そう言って、再び僕らは教室へ向かった

胸に微かなざわめきを覚えながらも

数分後、それは違う形でやってくる

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