第11話 ラブブック~♥ 11

「ただいま!」


谷子はバイトが終わり、

両親の暮らしている部屋に帰ってきた。


「おかえり、

 バイトは楽しかった?」


母、谷代は心配そうに聞いてくる。


「楽しかったよ。

 ワハハハハ。」


谷子は不気味に笑う。

これも本ばかり読んできた弊害か?


「怖い・・・。」


母は、わが娘ながら不気味に思った。


「あれ?その本はどうしたの?」


谷子は図書館で借りた本しか、

家には持ち込まない。


渋井家はバイト両親なので、

雑誌や新刊の本を買うことはなかった。


母は、

谷子が新しい本を持っているのが珍しかった。


「捨てるっていうから、

 バイト先の人がくれたの。」


「よかったわね。

 ご飯までに読んでしまいなさい。」


「うん。

 すぐに読んじゃうね。」


谷子は本のタイトルを見た。


「ファンタジーものか。」


谷子は床に座り、

もらってきた本を読み始めた。


谷子の周りには、

独特のオーラのようなものがみなぎっている。


本のページが流れるようにめくれていく。


奥義 速読である。

谷子は1億冊の本を読んでいる間に習得したのである。


谷子は、

1っ瞬で本の内容も把握できるのである。


そして谷子はパンと本を閉じた。

速読であっと言う間に読み終わったのだ。


「読書、最高!」


谷子は笑顔だった。




「私の部屋だ~♪」


夕ご飯を食べ終わり、

お父さんとお母さんに、


「おやすみなさい。」


と頭を下げて、

谷子は天井裏の部屋にやってきた。


天井裏の部屋は、

木製のベッドと机とイスがある。

ベランダは無いが天窓がある。

シャワーとトイレ一体型のユニットバス。

ガスコンロとシンクの台所がある。


料理をしたことがない谷子は、

当分の間は、ご飯は親の元に食べに行くつもりだった。


部屋には高校の制服と教科書とカバン、

明日の着替えの服と下着が置いてある。


机の上にはバイト先でもらった、

読み終わった本が置いてある。


「わ~い~♪」


谷子は喜んでいる。


それもそのはず、

今まで6畳のワンルームマンションで、

親子3人で暮らしてきたのだ。


バイト両親の稼ぎでは、

自分の部屋が手に入るとは思っていなかった。


「たぁ!」


谷子はベッドにうつ伏せに飛び込む。

今まで親子3人で川の字に布団を引いていた。

初ベットなのである。


「フカフカ~♪」


谷子はうれしくて仕方がない。

仰向きに体の向きを変える。


「あ、お星さま!」


谷子の目に天窓が見えた。

夜空でお星さまが金色に輝いている。


「きれい~♪」


谷子が暮らしてきた部屋は3階にあった。

そのためベランダにでても、

周りの高いビルが邪魔で、

夜空のお星さまは見ることができなかった。


夜空のお星さまに、

谷子は感動している。


夜空を眺めている谷子は、

あくびをした。


「ふわ~あ。」


アルバイト初日で疲れていたのか、

自分の部屋のベッドで、

自然と谷子は笑顔で眠りについた。


「すう~すう~すやすや。」



つづく。

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