第4話 ラブブック~♥ 4

「ムカつく」


谷子は、

内気で大人しい性格だった。


休み時間も、

一人で本を読んでいた。


しかし、

中学校の頃の谷子は、

かわいい顔をした女の子だったので、

男子から人気があった。


それが面白くない女子たちから、

いじめられた。


「暗い。」

「ブサイク。」

「キモイ。」


両親にも心配をかけたくない谷子は、

誰にも相談できなかった。


担任の先生も、

見て見ぬフリで、助けてくれなかった。


反撃できる性格ではなかったので、

いじめられまくった。


気がつけば谷子は、

自分に自信のない女の子に完成していた。


何か嫌なことがあると、

本の世界に逃げ込んでしまうのであった。




「化け物。」


前髪が長く目が見えない、眼鏡をかけ、ソバカスもある、

不気味な女の子がいる。


その女の子は、

一人で机に座り、本を読んでいた。


谷子だった。


どうしたら、

女の子にいじめられないかを、

谷子は考えた。


「自分が気持ち悪くなれば、

 誰も近づいて来なくなる。」


「私には大好きな本があるから、

 一人でも大丈夫。」


谷子はドンドン気持ち悪くなり、

男子からチヤホヤされなくなった。


谷子が男子から人気がなくなったので、

いじめをしていた女子たちも、

谷子に関わって、

自分たちが男子に嫌われたくないので、

谷子に近づかなくなった。




「貧乳。」


谷子は女子から、

いじめられなくなった。


代わりに男子から、

からかわれるようになってしまった。


「前髪長すぎ」

「メガネ」

「ソバカス」

「化け物」

「Aカップ」


机に座って本を読んでいる時も、

精神年齢の低い男子に好き勝手言われる。

谷子は相手にせず、無視している。


「万引きして来い。」


谷子は無視する。


「生意気だ!」


谷子は殴られても、ぶっ飛ばされても、

谷子は無視する。


心配して声をかけてくれる子には、


「ありがとう。


 でも私に関わると、

 あなたもいじめられるから、

 関わらない方がいいよ。」


と谷子は言う。


谷子は自分というものを、

ちゃんと持っていたのである。


谷子は仮面を被って、

学校生活を送っていたのであった。




「3年耐える。」


これが谷子の作戦である。

万引きや暴力のいじめに加担するよりも、

自殺することよりも、


谷子は「生きる」ことを選んだ。



周りの生徒からは不気味に見えた、

谷子の伸びすぎた前髪は、

メガネをかけることで、目には入らない。


他社から自分の視線を読まれないという、

メリットもある。


といっても谷子の場合、

机の上の本しか見ていないのだが・・・。


ソバカスも自分で、

ペンで点々を書いただけの特殊メイクであった。


これも全て、

谷子が大好きな本を読んで得た知識だった。


つづく。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る