第5話 ラブブック~♥ 5

「その世界が全てじゃない!」


谷子は知っていた。


現実の生活が苦しくても、

その世界が全てじゃないと。


谷子の生きている世界は広くて、

いろんな可能性があるということを。


教えてくれたのは、

谷子の大好きな本たちだった。


いじめられて苦しい、

ここから逃げだしたいという思いより、


「この本の続きが読みたい!」


「これからどういう展開になるの?」


「困ったな、

 こういう時はどうすればいいの?」


全て本から知識を学び、探求心を育んだ。

谷子は現実逃避のプロフェッショナなのである。




「私みたいだ。」


谷子はある本を読んでいて、そう思った。


その本の内容は、

王子が後継者争いで命を逆賊に狙われている。

王子は賢い人に泣きついた。


「どうすればいい!?

 私は死にたくない!

 助けてくれ!」


この本を読んで谷子は思った。


「私と同じだ。」


王子様はいじめられている谷子と同じ、

危機的状況に追い詰められている。


「こういう時、どうすればいいの?

 私にも教えて、賢い人。」


賢い人は王子様に言いました。


「道化を演じなさい。

 そうすれば周りは、


 「この馬鹿王子が、

  王様になることはないな、


  関わってると自分の評判が下がるので、

  相手にするのはやめておこう。」


 となっていくでしょう。」


「ありがとう、賢い人!」


王子様と谷子は賢い人に感謝した。


そして、

王子様と谷子は道化を演じ、

危機的状況を乗り切った。


王子様は、

王様になることができた。


谷子も、

中学校を卒業することができたのだった。




「大きくならない・・・。」


谷子は、

牛乳を毎日1本飲んでいる。


「はぁ・・・。」


自分の胸を見ると、

ため息しか出てこない。


谷子の胸は、

「貧乳」「Aカップ」

だった。


とある賢い人は言った。


「牛乳を毎日飲んでると、

 おっぱいが大きくなるぞ!」


それから谷子は、

牛乳を毎日1本飲んでいる。


「賢い人のうそつき。」



暗いキャラを演じてきた谷子に、

彼氏ができる訳もなく、

おっぱいを揉まれることもなく、

巨乳になるはずがなかった。


谷子にできることは、

牛乳を飲むことか、

恋愛の本を読んで、

空想恋愛をすることぐらいだった。




「貧乳!」


男子にからかわれてきた谷子は、

男の子が苦手になっていた。


「王子様なんていない。」


いじめられている時に、

助けてくれる男の子はいなかった。


読書好きの谷子だが、

恋愛だけは、賢い人に謀反を起こしている。


「逃げて!お姫様!

 その王子様は悪い男よ!」


「ああ!かわいそうなお姫様!

 悪い男に遊んで捨てられて!」


次第に恋愛の対象は、

女の子に向けられるようになった。


「お姫様、かわいい~♪」


谷子の恋愛の愛読書は、

こうしてガールズラブになったのである。


「かわいい、ダイヤモンド姫~♪」


奇しくも、

恋愛の趣味が、

某魔法使いと同じになったのであった。



のちに、書籍化・大衆向け用に、


「カワイイ女の子キャラが活躍する本が好き」に訂正される。


つづく。

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