雪の日の京都の町で
小道けいな
第1話
冬の特別公開があると新聞で初めて知った。昔からあったのかもしれないが、旅行のパンフレットを足しげく通ってもらってきたり、ネットが発達してもあまりそっちで調べない。まあ、出不精というか情報収集下手とかいろいろ理由はあるだろう。
その理由は置いておくが、初めて特別公開のことを知り、私が行ってみたいところがリストに会ったのだった。
学生の時に小野篁に惹かれ、論文も書いたし、小説も読んだ。あの論文でよく卒業できたと思うできなので恥ずかしいが、小野篁という人物に惹かれたのは事実だった。
日帰りチケットを買い、新幹線に乗る。
冬で寒そうだし、カレンダー上の休日でもあったために、道は混雑するだろうと考えた。だから、以前買ったバスの乗り放題チケットは買わない。地図を見て調べ、分かったのだ、歩ける、と。
週間天気予報を見て、寒いというのは知っていた。雪も注意かもという感じだったとは思う。
その頃は、地球温暖化やら暖冬やらで雪が降っても積もると全く考えていなかった。
道を歩く、雪の降り注ぐ古都を。
まず、第一目標に向かう。あとは「いけたらいいなぁ」という程度の予定にしてあった。
最初に買いたかったものが売っている店にたどり着く。早い話が道を一本間違えて到着したのだ。荷物になるとはいえそこで買い物をし、道を確認する。
六道さんあたりをうろつき、清水寺の手前、坂にあるお店に向かう。
そこのお店についたときには、雪が積もり始めていたのだ。まさかの状況に私は驚く。観光客も足早になり、動きが変わった。雪を避けるように。
ああ、せっかくなのに。
私はそう思った。それを口にしたのか、顔に出たからなのか記憶が薄いが、店員の言葉で気分が変わった。
「雪で残念と思わないで。雪の京都は珍しいんだから」
ああ、そうだ。
寺の建物と雪、咲き始めた梅と雪。
晴れていたら見えない光景ではないか?
一番少ない天気は雪なのだ。
坂道なので用心しつつ下りる。雪になれていない観光客が「きゃあきゃあ」言いながら移動している。私も心の中でひやひやしているけれどもね。
郵便局のバイクが入り口にいる。
携帯電話か何かで局に連絡を入れている。
「バイクじゃ無理だからあとで車で」
そんな感じの声が聞こえる。ああ、そうか、清水の坂は雪が降ると大変なのだ、生活というのも。
趣があるなど言っていられない。
なお、雪が降って寒いから、思わず電車に乗る。地下鉄ではないけど地下にあった気がする。寒く無ければ乗ることはなかったローカル線。なんとなく国立博物館に下りて展示を見て行く。
寒さ避け。
寄るつもりは全くなかったけれども、かっちり決めた旅じゃないから許されることであり、楽しい驚き。
最後に寄った寺では、梅と雪が共演をしていた。
列に並びつつも写真を撮る。立派なカメラを持ったおじさんが「きれいだし、珍しいし」というようなことを言っていた。
美しい景色。
そのあとの年、大雪が降った。
写真の雪の京都は、どこかに埋もれてしまった。携帯電話で撮ったの物と、フィルムだったような気もする。
ただ美しい、古都の風景。
雪の日の京都の町で 小道けいな @konokomichi
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