間章
七雄と終わりの先の世界
知識として知っているが、この世の中には世界を救った人間がいる。
世界中の常識だ。
現代を生きる人間でその名を知らない者は一人もいないだろう。
ダヴィド・ロイヤード
李・神美
エカテリーナ・アレクセーエヴナ・ウスティーノヴァ
リュエル
ケイン・マクリーン
エレノア・シャーロット・シュヴァイツェル
正午・厳木
この七人の名は、おそらくこの世界において人間が、両親兄弟の次くらいに覚える名前なのかもしれない。
原初の七雄。
終末において世界を救った英雄。
それは神の力から人類を守護した英雄の名前である。
しかし、これは必ずしも人類全体の共通認識ではない。
彼らが行った行為は神を侮辱している。
神の落とした天罰を、人の身でありながら払いのけ、神の御使をその身に封じた七人の人間。
それが原初の七雄という存在である。
崩壊、終末が発生し、彼らの手によって「終末」が封じられて七十年以上の時が過ぎた今、世界はその偽りの延長に限界を迎えようとしている。
神が管理し、神が終わらせようとしたこの世界は、もはや存続していること自体が奇跡なのだ。
否、神の行いを奇跡と呼ぶなら、これは悪魔の所業と言うべきかもしれない。
終末を無理やり否定し、終わるはずだった世界を無理やりに救った七人。
世界は崩壊を経て大きく変動した。
この世界において英雄はもはや神の下を去り、人は神に背いた。
神は人を罰することに失敗し、人は神の脅威を知った。
人は神を恐れ、敬い、そして一部は神の下を離れようとしている。
神を信じる者は祈り、そうでない者は別離を試みる。
英雄は世界を救った。
終わるはずだった世界は存続している。
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