間章 

二つの計画、一つの……

 二つの計画は順調に軌道に乗り始めた。

 片方は、一時、プロジェクト緊急停止の危機に瀕したが、特異点イレギュラーは上手く活用されており、結果的にはプラスに働いている。

 現状の結果から判断し、両被験者である彼らを上位計画のために引き合わせ、人類全体のために両名の関係を作り上げる。

 ××・××(×××・××)と×・××(×シリーズ)。

 両者の意思は出来るだけ尊重するが、予定より早く双子が育ちつつある。

 上位計画の進行速度に合わせ、早急に相反する位置にある彼らのクロッシングを開始する必要がある。

 まだ、両者ともに不安定ではあるが、仕方がない。

 こちらには特異点イレギュラーの『可能性の未来』がある。修正がきく限り、問題はない。

 両計画の最終段階フェーズ・スリー、『新原罪人交叉クロス・クリミナル』の開始をここに承認する。

 



 送信されてきた文書を受け取って、濡烏の髪を長く伸ばした妙齢の美女が文書にサインする。彼女の目の前には十字架に磔にされた青年がいる。そして、彼女の背後には大量の彼女らがいた。


 

 送信されてきた文書を受け取って、黒髪に、一部白髪を持つ老人が文書にサインする。彼のは彼の執務室のデスクに置かれたある家族の写真を見つめた。そこには、満面の笑みで家族の中心に立つ、老人と同じく一部白髪を持つ少年が写っている。それは彼と瓜二つだった。

 


 送信されてきた文書を受け取って、黒く短い髪に、唇から牙が覗く、若い見た目の男性が文書にサインする。彼の隣では一人の女性がその様子を悲しげに見つめていた。




 送信されてきた文書を受け取って、三名の署名を確認してから、最後に高齢の男性がサインする。そして、それを目の前に立つ男に渡した。

 男はそれを見て、少し悲しそうに目を細める。が、やがて、諦めたように首を振って、再び文書を見つめ、少し笑った。高齢の男性はそんな男を見て、問いかけた。

巴蛇はだ様、もし、気にさわるようでしたら…………」

 それを手で遮って男は言う。

「いや、少し子供達を哀れんだだけだ。知恵ソフィアの欠片を受け継ぐ王と神体ライフへ至る者を人柱の親とするのか?」

「えぇ、その二人が、最適です。我々は御国みくにが到来する前になんとしてでも新天地をソウゾウする必要がありますから」

「わかっている。

それにしても『交配』『背反』ときて、『クロス・クリミナル十字架と罪人』か。

 皮肉が効いているな」

「干渉されますかね?」

「その時のための特異点イレギュラーなのだろう? いや、不謹慎だな。すまない」

「いえ、真夜まよはもうおりませんから………………」

「空想にするのはやめておけ、真夜をとどめているのは彼であり、同時にお前たちの意思だ。自分たちがもてる器の力であることを努努ゆめゆめ忘れるな」

 俯いて手をあわせる高齢の男性を見て、男は文書を置き、部屋から消えた。

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