第11話 思いもよらないアイデア

次の日



 「ふぁああ、おっす」



 「おはよう、お前今日は一段と眠そうだな」



  昨日はあれからプロデュースに関して書いてある音楽雑誌や本を色々読み漁ってたら気がついたら朝になっていた。



 「すげー眠い、教授来たら起こして。ちょい寝るわ」



 そう言って友達の隣に座る。



 「ゲームでもしてたん?」



 「うーん、まあ色々かな」



 そう言って目をつむるとすぐに眠気におそわれた。



 「おい起きろ。授業終わったぞ。」



 そう言われ目を覚ますと、ゼミ室には人がチラホラとしかいなかった。

 


 「なんで起こしてくれなかったんだよ」



 そう言うと友達は、



 「今日のゼミ、先生の説明とかだったからお前眠そうだったし起こさなくてもいいかなって。お前の分のプリントは貰っておいたし」



 こいつは仏か、こんなに優しいとは。



 「ありがとう助かったよ」



 そう言うと彼は、



 「その代わりプリントと引き換えに飯おごってよ、今金なくてさ。これから学食で飯でも食べに行こうぜ」



 そういうことか…、まあ飯くらいならと思ったがこれから彼女に会いに行かなければ行けないんだった。



 「ごめん、今日これから予定あるんだ。明日でもいい?」



 「別におごってくれるんならいつでもいいけど。なんかあんの?」



 「まあいろいろ」



 そう答えて急いで学食に向かう。時計を見ると約束した時間を10分過ぎてしまっていた。



 学食に着き彼女を探す。


 

 彼女は窓際の席で一人でご飯を食べていた。

 


 俺は急いで彼女のもとに向かう。



 「ごめん、遅れた!」



 そう言うと彼女はご飯をもぐもぐ食べながら俺に、



 「今日のゼミずっと寝てたけど疲れてるの?」



 と聞いてきた。



 「まあいろいろとね。俺もご飯買ってくるからちょい待ってて」



 荷物を置き、食券を買い自分の番を待つ。



 うちの学食は量も普通だし味も普通だ。そして値段も大して安くないがこの大学は食べるところがここしかない。メニューも代わり映えがしないためいつも同じものを頼んでしまう。



 席に戻ると彼女は学食を食べ終えていた。



 「今日これから何するの?」



と席につき彼女に尋ねると彼女は、



 「特に決めてない。でも何かしなきゃいけないような気がして」



そうですか。まあそうだよな、自分を客観的に見ることが出来なくて俺に頼ってきたわけだし。



 「なにか今と変えたい所とか自分の中で目処とかついてんの?」



 「うーん、とくには。逆になんか私の変えたほうがいいところって思い浮かぶ?」



 そうだなー。自分的にはこのままでもいいと思うんだけど、多くの人に知ってもらいたいなら色々と変えていかなければいけないんだろうけど。



 「まあとりあえずはジャンルをどうするかだと思うんだけど」



 「ジャンル?」



 ただ闇雲に多くの人に知ってもらいたいと言うだけでは全部が中途半端になりそうな気がする。だから大まかなジャンルは決めておいたほうがいいと思う。



 「このままお前の好きなロックテイストで行くのもいいと思うけど、それだと限界があるようなきがするんだよね。」



 「でもロックはやめたくないんだけど。」



 「ロックって言っても色々あるわけだし、ある程度人気が出た後でどうとでもなるじゃん?だったらまず注目してもらうことが大事だと思うんだ。できるだけ多くの人が好きなジャンルで。」



 「そっか」



「言い方が悪いかもだけど、お前ヴィジュアルはすごくいいからそれを利用しない手はないと思うんだ。」



 「例えば?」



 「そうだなー、メンバーを集めてガールズバンドでもいいだろうし、女の人に共感してもらう系の歌を歌うのも有りだと思うけど、自分の中ではどれもあまりピンとこないんだよね」



 「そうね、私も今言ったのだとどれもピンとこない」



 「俺が思うに、お前の一番の魅力は人を引きつける圧倒的な自信だと思うんだ。だからその自信を一番表現できるのがいいと思う。」



 「俺は自信がないからお前のライブを見たとき、すごく羨ましいと思ったし、自分もお前みたいに自信満々になりたいなとも思った。だからお前の演奏を聴いて憧れるやつは少なからずいると思うんだよね。」



 「だから少なからずいるその層のアイコン的な存在になるのが、取りあえずの理想だと思う。お前自身も自分みたいな人たちを音楽で元気にしたいみたいなのが目標だし。」



 「でもその目標と理想はわかったけど結局どのジャンルでいくのかだよね?」



 音楽のジャンルは数えられないほどたくさんある。その中で今の彼女に出来るとしたら、バンドかシンガーソングライターみたいな感じしかないよな…。それだと今のと全然変わらないし。



 「お前ロック以外に聴くものとかないの?」



 「うーん、なんだろう。音楽は比較的色々聴くけどやっぱり好きなのはロックとかパンクかな。あとはアイドルとか」



 アイドル?こいつその見た目でアイドルなんかも聴くのか。全然予想してなかった。



 「アイドルってどんなの聴くの?男?女?」



 「女の子のアイドルだよ。私の好きなバンドのメンバーがそのアイドルの作詞作曲しててそこから色々なアイドル聴くようになったんだよね。」



 そうか、最近のアイドルとかってバンドメンバーとかが作詞作曲で参加することも少なくないんだった。アイドルってジャンルだったらどんなコンセプトでやってもある程度はいいだろうし、彼女の好きなロックとかでやっても問題はないのかも。



 「アイドルってどんなコンセプトでやってもいいんだよね?」



 「そうね。最近はメタルの曲を歌うアイドルもいるし、色々なアイドルがいるよ。」



 アイドルか。

 考えてもみなかったけどアイドルってのはいいアイデアなのかもしれない。それなら彼女の個性も活かせるだろうし。



 「アイドルってのはいいアイデアかもしれないな」



 「えっ?私がアイドル。無理無理、私アイドルみたいに愛想良く出来ないし。」



 「でも逆にそれも個性としてみればいいのかもしれないよ。自信がない人に自信をつけさせるロック系アイドルか。」

 


 「アイドルなんかやりたくない。」



 「でもアイドルならロックもやろうと思えば出来るしいいアイデアだと思うんだけど」

 


 「私絶対イヤだからね、アイドルは」



 彼女はアイドルをやることに対してすごく嫌そうにしていたが、でも俺の中ではアイドルは彼女のヴィジュアル的にもピッタシだと感じた。

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彼女に夢を、彼には自信を shiki @shiki_rock11

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