第7話 笑顔が素敵な彼女
外に出ると雨が降っていた。
天気予報では今日の夜からの天気は曇だったはずなのに。
俺はカバンの中に入れっぱなしだった折りたたみ傘の存在を思い出す。
傘をさし、ライブハウスの出入り口で待つことにした。
雨は時間が立つにつれ、どんどん強くなってくる。こんなことならゼミのときに連絡先でも聞いておけばよかった。
連絡が取れなければ今日の彼女の予定を確認することさえ出来ない。他の対バンメンバーとの打ち上げなどあるのかもしれないし、これから会ってくれる可能性があるのかさえ分からない。
こんな所で待っていて、迷惑なのかもしれないということはわかってる。だけど俺はどうしても彼女に会いたい。今会ってこの気持を伝えたい。大学で伝えてもいいのかもしれないが、この気持ちが冷めてしまわないうちに伝えなければいけないような気がした。
でもなんて彼女に言えばいいんだろう。彼女に今の気持ちを、伝えたい気持ちはあるが言葉にしようと考えると、頭の中がどんどんごちゃごちゃこんがらがってしまう。
自分のボキャブラリーの少なさ恨みながらも色々な言葉を考えていると、彼女はおもったより早くライブハウスから出てきた。
傘を持っていないようでどうやって帰ろうか考えているようだ。そして雨の中走り出そうとしている彼女に近づきそっと傘を差し出し声をかける。
こんなことを伝えるのは初めてなのに加えて、雨のせいで気温が下がり身体が冷えて口がうまく回らない。
「お前、最高にロックだったよ!!」
結局ロックって言葉しか浮かばなかった。俺は何か困ったことがあるとロックと言う言葉を使いたがる。
そんな俺を見て彼女はこんな所で待っていると思わなかったのか、すごく驚いた表情をしていた。そしてその表情は笑顔に変わった。
「だから言ったでしょ、後悔させないって」
そう言うと、
「雨で寒かったでしょ、どっかお店にでも入ろうか。今日のライブの打ち上げ代わりに。あと君のおごりで」
そう言う彼女の笑顔はまるでアイドルのような笑顔でとてもかわいく見えた。
俺はその笑顔が嬉しくて半分ニヤけながら、男が女におごってあげる気持ちが少しわかったような気がした。
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