第6話 妬みと嫉みと希望のヒカリ
入り口でチケットを渡し、ライブハウスに入る。
今回のライブは、大学生のバンドが多いためなのか客層も学生みたいなのが多い。
俺はライブに行くと演奏中はすごく楽しんでいるのに、ライブが終わり帰り道になると何故かなんとも言えない感情に苛まれてしまう。
全然歌もうまくないし、演奏もできない、ヴィジュアルがそこまで言い訳ではないのに、自分もその場に立ちたいという気持ちが凄く強くなってしまうのだ。
彼女の対バン相手をみても、またその気持になってきた。
この程度で女の子たちからちやほやされるのは羨ましすぎるし、俺のほうがかっこいいロックをみんなにみせてあげることができる。
周りのお客たちも対して音楽が好きそうじゃないし、ただ仲間のライブだからお祭り感覚で来てる奴らばかり。
同じような音楽に聴き飽きて、ロビーの喫煙所に向かう。
ポケットから煙草を取り出し、火をつける。
「やっぱり、来なきゃよかったな。」
煙を吐き出しながらそう思って時計をみるとそろそろ彼女の出番だ。
どうせ彼女も他のバンドよろしく、大したことないんだろうなと思っていた。
彼女は一人で、キャンディアップルレッドのストラトを持って登場。
どうやら他の楽器はパソコンからの打ち込みらしく、演奏の準備をし始めた。
そして準備が終わり、マイクスタンドの前に立つ。
彼女はMCなどはほとんどせず、かんたんな挨拶をしすぐ演奏に移った。
演奏が始まると、俺は彼女の演奏を夢中で聴いていた。
彼女の演奏はお世辞にも上手いとは言えるものではなかった。むしろ彼女の前に演奏していたバンドたちのほうが全然上手である。だけど俺は、今まで聴いた曲の中でも一番の衝撃を受けた。
なんでそんなに衝撃を受けたのかと言われると、うまく言葉にはできない。 出来ないがすごいという感情だけはわかる。
俺はどのロッカーが言ったのかうるおぼえで覚えていないのだが、好きな言葉がある。
「ロックって言うのは、自分がロックだと思えばどんなものだってロックなんだ」
彼女の曲はロックかロックじゃないかと言われればどちらかと言えばロックじゃないのかもしれない。
だけど俺には、彼女の存在自体がロックな感じがした。
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