第2話 ロックな彼女は今日もファンキー
そんなことを考えながらタバコを吸っていると同じ学科の友だちがやってきた。
「おっす、今日からゼミが始まるな。まあここのゼミなら適当に出席してれば単位ももらえるし楽勝だな。」
「いつものメンバーで合わせてゼミも選んだから顔なじみばっかりで新鮮味もないけどな。」
そんなことを話していると、ゼミが始まる時間になった。
初日から遅刻はまずいと思いダッシュでゼミ室に向かうが教授はまだ来ておらず、ほっと胸をなでおろし乱れた呼吸を整えた。
ゼミ室に入ると話したことない人は数人しかおらず思った通りいつものメンバーだった。
「お前らまたタバコで遅刻かよ、このヤニカス共が(笑)」
うるせーよと言いながら席につくと、ちょうど教授もやってきた。
教授は今日は初めてのゼミなので皆さんの自己紹介をしてくださいという。
そして学籍番号が早い人達から名前と趣味を言い始めた。
趣味のことはめんどくさいからいいたくないなと思いつつ、顔見知りの奴らしかいないためスマートフォンを眺めているとすぐに自分の順番が回ってきた。
「久保田優作。趣味はえーっと音楽を聴くことと映画鑑賞とかですかね。よろしくお願いします。」
趣味の音楽と映画のことをあまり言いたくはなかったがこのメンバーなら音楽を聴いたり映画を観たりするやつもあんまりいないからそのことで絡まれることはないだろう。
自分の順番が終わり席に着くと次のやつが自己紹介を始めた。
彼女の名前は瀬良凛。前下がりボブでいつもパンクな格好をしていて何かしらのバンドTシャツを着ているやつだ。
煙草を吸っているようで喫煙所では何回か見かけたこともある。
いつもなんらかのバンドTシャツを着ている。
俺もそれらのバンドが好きで、CDも持っているものもあれば、何回かライブに行ったことがあるバンドもいる。最高にかっこいいバンド達だ。
だけどあんなにロック好きですよみたいな、いかにもなファッションは自分にはできない。
あんな格好をしていたら周りからなんて言われるかわかったもんじゃない。
好きなものや自分の個性を全面に出している彼女は、自分とは真逆で自分にないものを持っていると感じたが、やっぱり彼女のような人とは友だちになることもないと思っていた。
そんな彼女が自分の自己紹介を始めた。
「瀬良凛です。好きなものはロック。以上」
そう言うと彼女は席についた。
「あいつ、顔は可愛いのにファッションとか目つきとか異常に怖いよな」
隣りに座っているやつが小声で僕にそう言う。
「そうだな。いつも一人でいるし友達もいないんじゃないかな」
そんな話をしていると教授が全員の自己紹介も終わったようだから今日のゼミはこのくらいにしてやめようと言い始めた。この教授は授業を早めに終えてしまうことで学科の中では有名なのだ。
やっぱりこのゼミにして正解だった。
そう思いながら帰り支度をし、とりあえず喫煙所に向かおうと席を立ったとき、ゼミ室のドアの前にいる彼女と目があったような気がしたが、目があったのではなく、あれはガンを飛ばされていたのかもしれないと思う俺であった。
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