彼女に夢を、彼には自信を
shiki
〜プロローグ〜
第1話 曇った天気と煙草のケムリ
東京に住むまで、満員電車がこんなにつらいものだとは俺は思わなかった。そう久保田優作は通学のたびに思っている。
毎日ぎゅうぎゅうの電車に揺られながらこの大学に通うのも今年で三年目になる。
俺は電車が嫌いだ。
地方の出身であるということもあり、今まで電車に乗るという習慣がなかった。 それに知らない人たちとこんなに肩をぶつけ合いながら乗るなんて気持ちが悪くて仕方がない。
そんなことにイライラするたびに聴いている音楽の音量を上げる。
そして大学に着いたら足早にいつもの喫煙所に向かう。タバコを取り出し火をつけ、肺の中にいっぱいに煙を吸い込む。
雨が降っていたということもあり、ジメジメして篭ったような臭がする満員電車での思っ苦しい空気から開放され外で吸うタバコは格別に美味しい。
「最低あと二年はあの最悪でクソッタレの電車に乗らなきゃいけないのか」
そう考えるとこれから大学へ通うのも嫌になってくる。
俺はもともとこの大学を志望していたわけではない。
だからというのもあれだが、この大学があまり好きではないのだ。
ただただ志望校に見事落ちてしまったから通っているだけだ。高校時代にしっかり勉強していなかった自分が悪いのはわかっている。
一年生のうちは自分はこんな奴らとは違う。
そう思っていたが時間が立つに連れこの大学で友達ができてくると、この大学も良かったのかもしれないと思うようになってきた。
俺はこの単調な生活に満足しはじめているのだ。
俺はこの現状に満足している自分が嫌いで嫌いで仕方がない。
これじゃあ周りの奴らと何も変わらないじゃないか。
昔からそうだ、何をやっても自信が持てない。
自信が持てないということは自信が持てるほど努力をしてきていないということだ。
俺は趣味でも勉強でも全てに自信が持てないのだ。
俺は自分の趣味の話でさえ仲の良い友達にしか話さない。他の人に好きな映画や音楽のことを話したときに自分より詳しい人だったら自分が馬鹿にされるんじゃないか、下に見られてしまうのではないかと考えてしまうからだ。
じゃあ自信をつけるために努力しなよと自分に言い聞かせても、今までそうやって生活してきているのだから変えようと思ってもすぐには変えられない。いつもこの無限ループである。
俺はこの退屈な毎日から抜け出せない。
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