銀河太平記

@uhyo_ojisan

第1話 あっけない滅亡

西暦2116年

人類は滅亡した。

南アフリカに突如発生した新型ウィルスは瞬く間に世界中に伝播し、僅か半年の間で人類を滅亡させてしまった。

人類は滅亡した。

しかし、正確に言うと「地球上の人類は」である。

遥か高みから人類が滅亡していく様を指をくわえて見守るしかなかった若干の人々がいた。

さよう。

大気圏を突き抜けた遥かな高み。

静止衛星軌道を回る宇宙ステーションに取り残された僅かな人たちであった。

西暦2050年頃から国連ならびに各国の宇宙への移民計画が本格的に始動しており、太陽光エネルギーと効率的な水循環システムの実用検証が宇宙にて開始されていた。

宇宙ステーションは、合衆国、ロシア、中国、欧州、そして日本とイスラエルの共同

運営のものの5つであった。

しかし5つの宇宙ステーションのうち4つ、日本とイスラエルの共同運営のものを除いては、

そこに生存していた人たちは、やはり死滅してしまった。

合衆国、ロシア、中国、欧州の政府や財界の要人たちが地上の災難を避けるために宇宙に上がってきたのであった。

そして、そういった彼らの一部に潜在期のウィルス感染者がいたのだ。

かくして人類は、日本とイスラエルの共同運営の宇宙ステーションに残された108人だけとなった。

絶望的な状況に置かれた彼らであったが、人類再建に猛進した。

結婚という従来のモラルをかなぐり捨てて、その個体数を増やすことに日々邁進した。

宇宙に散らばる資源をかき集めて作業機械や宇宙船をつくり、それを使ってさらに資源を集めて。

そういった努力の末に西暦2224年、ようやく最初にスペースコロニーが完成した。

人類の総人口を2万人を超えた。

ここに至り人類は新しい共同国家「新人類共和国」の建国を宣言する。

おぞましき記憶とともに西暦を捨てて「新世紀」に年号を変えた。

あらたな年号と国家体制を得た人類の膨張はさらに加速していった。

新世紀37年には、12基のスペースコロニーの建設と移民が完了した。

人類の人口も100万を超えるようになった。

しかし残念なことに人口の増加とともに過去の民族主義が復活しその根を伸ばしていく。

日本系の住民とイスラエル系の住民との確執と対立である。

結果、12基のコロニーのうち8基は日本人が、残り4つは、イスラエル人が住むという状況になった。

そんな中で、日本とイスラエルが共存している組織があった。

「新人類宇宙技術研究所」である。(以下、研究所)

研究所は、共和国発足と同時に設立され、宇宙技術発展のための国家の統制を受けない超法規的立場を約束されていた。

そのような立場であったために政治的にも民族主義に走りつつある日本とイスラエルから徐々に距離を取り始めていた。

民族主義が幅を効かせていく中で、表向き統一国家の体をなしている中央政庁は徐々に力を失い各コロニーの自治が進展していく。、

そしてついて、イスラエル系の4つのコロニーが共和国から離反しあらたな国家として「ユダヤ連邦」を発足させるいたって、中央政庁の威信は地に落ちる。

人類は2つに割れる。





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