メタル

アレックス

第1話BIG MOUTH

西暦が過ぎ、半世紀が過ぎた頃、新暦53年。

地球の太平洋に浮かぶ人工島「スパナ」

ここに、地球と、地球付近の惑星、そして、太陽系の外のコロニーへ配備する為の兵器を開発している。

「試験用空間を宇宙タイプに変更、エンジン起動、5秒前」

彼の名はガロ。

ここのテストパイロットだ。

「せっかくの新型汎用機だ。 丁寧に扱ってくれよ!」

彼はルー。

グランドバトラーの設計開発、整備を行うそこそこのエリートだ。

「おう!任せろ!テスト機クミラファ、発進!」

先程は地上をシミュレートしていたテスト用空間だったが、今は一部オブジェクトが浮いている。宇宙の環境を再現しているのだ。静かで、無機質な空間に、騒音と巨大な物体が現れた。サイズは15メートル程の人間だった。それにしては金属的で、実際人間ではなかった。これは、新暦から開発が進められた人型機動兵器、グランドバトラーの新型機で、名前はクミラファ。各部のラッチに様々な装備をつけて汎用性を高めるため、コロニー配備機であり、世界初のグランドバトラーであるグアラスよりシンプルになっている。

「おおお!本当だ!宇宙でも動ける!地上機が、整備無しに、そのまま!」

「それなら良かった。僕も開発に参加したんだ。出来が悪かったらどうしようかと」

2人は兄弟で、それゆえの馴れ馴れしさを持って話していた。とはいえ、ガロは興奮であまり意味のある言葉を発していないし、ルーはその事はスルーしていた。

世界初のグランドバトラーであるグアラスは、コロニーをメインに開発していて、それ以外の場所で使うには各部の制御装置を設定し直さなければならなかった。これはコロニーから宇宙に出るうえで大きなネックとなっていた。しかし、このクミラファは、ある程度自動的に制御できるようになっていた。

「よし、早速始めようぜ!」

すると、試験空間に人形バルーンが放出された。

「ガロ、準備はいい?」

「おう!待ちきれねぇぜ!」

「行くよガロ!レディー ゴー!」

「いっくぜえぇぇ!」

なにも彼らはふざけているのではない。バルーンを破壊する速度を測る正式な試験だ。

兵器として、重要なテストの内だ。

しかしガロは、完全に楽しんでいた。


ここまでは、この世界での兵器開発の場において、当たり前の光景だった。


5つのバルーンを破壊したガロ、しかしタイムに納得がいかず、もう1回とねだっていた。

「もう…ガロは完全に楽しんでるんだから」

「まあいいじゃねえかよ!さぁ、もう1回」

そんな掛け合いのなか、試験監視室のモニターに1枚の画面が現れる

「ガロ、待って!」

そのモニターには、演説場のような場所に立つ男が映っていた。

「なんだ?どうかしたのか?」

「わからない。画面がジャックされた?」

監視室のほかのモニターも同じ状態の様だ。

すると、男が演説を始めた


「私は、いや、我々は宇宙に出て、新たなる大地に触れた。地球の環境を離れ、独自の文化を築いていく資格がある。だが、宇宙憲法には、宇宙の民に自治権は認められていない。おそらく、他のどこのコロニーも、その事へ不満を持っているだろう。私は、あまり回りくどい事を好まない。私は、ここに、新たな国を作ろうと思う。そして、それを拒否する者を制裁する。この、新たなる力によって!」

演説場の背景と思われた赤い壁。それはどうやら布らしい。そして、布が剥がれた瞬間、黄緑をベースとした巨大な兵器が現れた。

「見たか!これが新たなる力、私の思想は全ての宇宙へと広がる!その表れとして、繁殖力の高いカエルをモチーフにさせてもらった。この機体、ガマラスを初めとした我らの叡智に、世界は屈するであろう!」



一方的な宣戦布告であった。

余りにも現実味のない出来事だ。

「えーと。モニターがどうかしたのか?」

ジャックされていないクミラファのモニターでは把握出来なかったガロは、ルーに質問した。

「宣戦布告だ…」

「ハア?」

呆気に取られたルー。幸いにも、状況を把握出来ていないガロは冷静だった。

呆気に取られたせいで、周りは一周回って静寂にとらわれていた。

が、

それも打ち破られた


試験空間の壁が崩れ落ちる。

コロニーを再現していた空間と、外気が触れ、スパークが起きる。その光が収まった頃、非常ベルが鳴り、何かが起きた事を察知したガロ、重力が戻り、デブリもどきが雨のように降る。

ガロのクミラファの前には、巨大なカエルが降ってきた。

「あぁ…えっと…なんだぁ!?」

「ガロ!それ、演説の!」

全てが唐突に訪れた。

その機体は、宇宙独立帝国軍の新型機ガマラス。グアラスを改造した、宇宙、コロニー、地上、全てに対応したもう一つの機体だった。

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メタル アレックス @alex0314

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